トーレスの苛立ち。ノーチャンスを
打破するために「まず自分に怒れ」 (3ページ目)
一方、トーレスは孤立を余儀なくされていた。試合をするたび、その苛立ちは募っている。この日も、西大伍と接触したシーンは荒っぽさが目立った。振り上げた足を削られてうずくまったビジャに対しても、言葉を荒げていた。もともと優しげで落ち着いた選手だけに、フラストレーションを溜めている様子が際立つ。
「無意識の(偶発的)ミスで負けた」
カレーラス監督は試合を淡々と総括したが、そこに必然はなかったか――。
単純にボールをネットに蹴り込む技術で、トーレスは群を抜いている。その点、魔人のようにも映る。ヘディングも、ポストワークも、何もかも傑出している。だが、弾を込められない大砲は無用の長物に等しい。
ともあれ、伝説的選手はどんな状況でも、自ら道を切り開く使命を持つ。
「努力、犠牲、勤勉。それをいつも胸に刻み込め。おまえは怒ると、よりよいトレーニングができる。プレーできていないんだったら、まず自分に怒れ。それだけの理由があるはずだ」
名将として知られ、多くの選手に愛された故ルイス・アラゴネスが、ことあるごとにトーレスへ向かって投げかけていた言葉である。
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