鹿島の魂を受け継ぐ内田篤人。新主将は10歳下の若手をべた褒め (2ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 ところがこの失点で目が覚めたのか、そこから一旦は鹿島がペースを掴む。万全ではない状態で先発した内田が右サイドを駆け上がって鋭いクロスを放ったり、背番号10をまとう20歳の安部裕葵が相手のファウルを誘ったりして、反撃の機会をうかがった。そして前半21分に生まれた同点ゴールは、"一閃の雷光"と表現できるものだった。

 5代目の主将に任命された内田が、右サイドの低い位置でボールを動かすと見せかけて利き足の前に出し、ピンポイントのロングフィードを前方に送る。すると、そこに抜け出した新戦力の伊藤翔が完璧なファーストタッチから見事にシュートを流し込み、2戦連続ゴールをマークした。

 1988年生まれのベテランコンビのきらめく技により、スコアはタイに。ボールを回してじわじわと相手を追い込んで決めた得点も、2つの瞬間的な妙技で手数少なく奪ったゴールも、言うまでもなく同じ1点だ。

 鹿島はその6分後、永木亮太のFKから21歳のCB町田浩樹が豪快にヘディングでネットを揺らしたが、オフサイドの判定により無効に。前半の終盤には再び内田の見事な対角線のフィードから、新エース候補の安部がカットインからシュートを放った。

 しかし、後半は川崎にイニシアチブを握り返され、シュートは一本も記録できず。ただし、相手には8本のシュートを打たれながらも失点を防ぎ、リーグ王者の本拠地から勝ち点1を持ち帰ることはできた。前半に"惜しい"シーンを見せた若きCB町田は、タイミングがいいスライディングや水際のブロックでゴールを死守した。

 試合後、主将の内田は「今日のテーマのひとつに、忍耐、というのはあったと思う」と話した。

「自分たちからスペースを取りにいって(相手を)崩そうとして逆にボールを回されるくらいなら、カチっと守ろうと。守ろうと思えば、守り切れるのが鹿島だし。変にプライドを持って(攻めに)いけば、やられると思う。今はね。去年60試合して、その影響なのかケガ人も多い。ツケはいつか絶対にくるものだから。それらの状況を踏まえれば、今日の勝ち点1は次につながるものだよ」

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