J3首位の栃木を支える異色のコーチは、元バルセロナ在住カメラマン

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 Jリーグ各クラブの監督、コーチの供給元になっているのは選手だ。元選手が引退後に就く仕事。Jリーガーの再就職先。これが常識として浸透している。しかし海外に目を転じれば、プロ選手の経験がない監督はごまんといる。名監督も少なくない。「日本の常識、世界の非常識」と言いたくなる既成概念が、日本にはまだ存在している。

 日本で、選手としての経験に乏しいながら、実績を残した監督として知られるのが、吉武博文(現FC今治監督)だ。2013年のU‐17W杯で日本をベスト16へ導いた監督。個人的には、「日本」という名のつくチームの中で最もよいサッカーをした監督との位置づけになる。彼は元教師だ。ただし、少年サッカーの指導者として名を残してきた実績があり、サッカー指導に一貫して携わってきたスペシャリストだ。

 元銀行員で、現在、ナポリ監督の座に就いているマウリツィオ・サッリのように、全く別の職種から転身してきたわけではない。しかしそのサッリとて、余暇を利用して下部リーグに所属するチームを指導してきた。

試合後、栃木SCの選手を迎える鈴井智彦ヘッドコーチ試合後、栃木SCの選手を迎える鈴井智彦ヘッドコーチ 30代半ばを過ぎて初めてサッカーの指導と関わるケースは珍しい。現在、横山雄次監督率いる栃木SCでヘッドコーチの座に就いている鈴井智彦は例外中の例外と言っていいかもしれない。

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