2016.08.22

浦和を幻惑した「あちこちにいる」
中村憲剛。川崎Fが大一番を快勝

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 左サイドにいるはずの男が、気づけばピッチの真ん中や右サイドでプレーしている。まるで、紅白戦でひとり異なる色のビブスをまとったフリーマンのように――。

浦和戦勝利の立役者となった中村憲剛 J1セカンドステージ首位で、年間順位2位の浦和レッズと、セカンドステージ2位で、年間順位1位の川崎フロンターレによる大一番は、アウェーに乗り込んだ後者が2−1で勝利した。勝敗のカギを握ったのは、自由を与えられた男――川崎・中村憲剛のポジショニングだった。

 車屋紳太郎、登里享平、小宮山尊信と左サイドバックを負傷で欠く川崎がこの日に採用したのは、これまでの4バックではなく、3バック――浦和と同じ3−4−3だった。

 前線の「3」の左サイドに入った中村は、浦和ボールの際にはシステムどおりに左サイドにポジションを取り、対峙する浦和の3バックの右、森脇良太の攻撃参加をケアしていた。

 ところが、マイボールに転じた瞬間、中村はトップ下の選手であるかのようにピッチの中央へ侵入していく。そんな中村をマークするために森脇がついていくと、中村はさらに右サイドのほうまで顔を出す。そうした駆け引きについて中村が言う。

「モリ(森脇良太)がどこまでついてくるのかを見ていたんです」

 森脇が中村を深追いしすぎれば、浦和の守備のバランスは崩れてしまう。「俺が行くのか、モリが出たほうがいいのか、話しながらやっていた」と、浦和のMF阿部勇樹が語ったように、浦和は中村のマークを受け渡して対応した。ボランチの背後にポジションを取られたときには、阿部が後ろを振り返りながら中村の位置を確認し、パスコースを消すようなポジションを取る。だが、それこそが、中村が狙っていたことだった。