【Jリーグ】名波浩の視点/新助っ人バレーは、清水の救世主となるか (2ページ目)

  • photo by Kishiku Torao

 さて、この試合で注目された清水の新戦力、バレーの出来はどうだったのか。かつて、大宮をはじめ、ヴァンフォーレ甲府、ガンバ大阪などで活躍(J1出場79試合44得点/J2出場152試合71得点)。その後、中東のクラブでプレイし、今季は清水躍進の原動力として期待される存在だが、この日はロングボールのポイントにはなっていたものの、正直パッとしなかった。強烈な風がピッチに吹き込んでいて、その慣れないコンディションに苦しんだ部分もあると思うが、本来1試合でふた桁近くシュートを打つ選手が、この日は2本止まり。まだまだ力を発揮し切れていなかった。

 よく動き回っていたし、コンディション自体は悪くないと思う。問題は、やはり周囲とのコンビネーション不足にあるだろう。日本人選手としっかりとコミュニケーションを取って、スムーズな連係ができている大宮の2トップ、ズラタンとノヴァコヴィッチのプレイぶりとは明らかに違った。バレーは孤立することが多く、その点はこの試合で浮かび上がった清水の課題と言える。

 ひとつの原因は、4-3-3布陣の中盤が3ボランチに近い形なので、守備に追われるとどうしてもラインが下がってしまうことにある。すると、当然前線との距離が開いて、バレーは孤立してしまう。3人のうちひとりは、守備から攻撃への切り替えを早くして、バレーのサポートに入らなければいけない。

 村松が途中で交代したのは、そうした動きが足りなかったからだと思う。守備に関しては申し分なく、ボールアプローチやカバーリング能力は一級品なのだから、ボールを奪ってからの攻撃の質も上げていくことが大切。それができるようになれば、バレーはもちろんのこと、チームとしてもっとチャンスが生まれるはずだ。

 それは、村松に限らず、同じ中盤のイ・ミンスや、今後出番があるであろう、MF河井陽介やMF八反田康平らにも言えること。今は、中盤のアンカー的なポジションにいる杉山浩太の配球に頼り過ぎている部分があるので、残りふたりの中盤の選手も、守備と同じように攻撃のバランスをとることが必要だろう。

 また、3トップの両サイドの選手、高木俊幸と石毛のサポートも不可欠。ふたりがワイドに開いてしまうと、あまりいい形が見られなかった。日本代表の香川真司や岡崎慎司のように、どちらかひとりはインサイドにポジションを取ったときのほうがバレーとの絡みも出て、チャンスが生まれそうな雰囲気があった。今後は、そうした動きを意識しながら、新たなコンビネーションを確立していってほしい。

 とにかく、バレーは人に合わせるタイプではないので、周りの選手がバレーの動きを把握し合わせてあげることが重要だ。どんなに能力の高い選手でも、例えばメッシ(バルセロナ)にしても、クリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)にしても、周囲にサポートしてくれる選手がいるからこそ、その能力がより生かされるわけで、清水の選手はそのことを改めて認識すべきだろう。そして、バレーへの効果的なサポートを心掛けてほしい。それは、頭でわかっているだけではダメ。体が自然に反応するようにならなければいけない。

 ともあれ、チーム全体で見れば、若い選手が多い清水はこれからの伸びしろが十分にある。初ゴールを決めた石毛は、さすがマンチェスター・シティの練習に参加しただけあって、キレのいい動きを見せていた。相手のスピードにも、味方との感覚にも順応するのが早く、試合をこなすごとに急速に進化していきそうだった。そんな石毛同様、可能性のある若手がたくさんいるので、ゴトビ監督も今後の上積みをかなり期待していた。もしそれが、想像の範囲を越えることになれば、かなり上を目指せるのではないだろうか。

プロフィール

  • 名波 浩

    名波 浩 (ななみ・ひろし)

    1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍

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