検索

サッカー日本代表が守り倒した韓国戦に見る森保監督の本質 この戦い方に未来はあるのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【結果オーライとはいえ......】

 一方的に攻められ、それを守り抜く試合は、相手が強い場合はともかく、互角かそれ以下になると情けなく見える。これは筆者の場合だが、勝利しても喜びたくなる気持ちは半減するどころか、雲散霧消する。守りきってもさして褒められる話ではないし、一方で攻撃の練習にはならない。

 負けることを極端に恐れるサッカーである。森保監督は目指すサッカーを口にすることはないが、これこそがその正体になる。それを好きだという人はそれでいいが、筆者はそうはいかない。2択で言うならニールセン派だ。

 タラレバの話になるが、後半40分、GK大迫敬介が、相手FWイ・ホジェが放ったシュートを超美技で止めていなかったら、超守備的シフトで臨みながら、守りきれなかった試合というストーリーになっていた。典型的な采配ミスで引き分けたことになる。紙一重の関係にあるのだ。この1-0は結果オーライと言っても過言ではない。

 このような守備的サッカーを続けていると、いつまで経っても攻撃は上達しない。「ビルドアップが我々の強みだ」(ニールセン監督)という言葉が森保監督の口から出てくることはない。

 そしてこの典型的な守備的サッカーに、選手は面白みを感じないと思う。特に攻撃的な選手が気の毒になる。後方を大人数で固めれば前線の人数は減る。能力を発揮しづらい環境に身を置くことになる。これでテストだと言われると不公平感が残る。

 結果的に0点で抑えたディフェンス陣にしても、申し訳ないが韓国の攻撃は主に質の低い単純な放り込みサッカーだ。胸を張るわけにはいかない。

 試合後の森保監督はよくしゃべった。1-0で守りきる森保監督らしい勝利を飾ったことでアドレナリンが出たのだろうか。「韓日でともに頑張っていきましょう」的な言葉まで飛び出した。

 繰り返しになるが、森保監督の本性を見せられた試合だった。この守備的サッカーに明るい未来が待ち受けているとは思えない。日本のサッカーの普及発展につながるとも思えない。勝利がこれほど楽しく映らない試合も珍しい。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る