サッカー日本代表に重大懸念 三笘薫がウイングバックに入れば「サイドバック」は消えゆく運命に
連載第14回
杉山茂樹の「看過できない」
日本代表のストロングポイントをズバリ言えば、いいウインガーが数多く揃っている点にある。たとえば11月10日(現地時間)、バルセロナ戦で抜群のプレーを披露した久保建英だ。レアル・ソシエダの右ウイングとしてスタメン出場を果たすや、相手の逆を突く細かなステップでバルサDFを翻弄。「うまい選手はうまい選手に弱い」という格言どおり、久保のドリブル&フェイントは、今季これまで好調だったバルサの調子を狂わせるに十分な出来だった。
その格言は、その前日の9日、マンチェスター・シティに逆転勝ちを収めたブライトンの左ウイング、三笘薫にも少なからずあてはまった。一昨季のチャンピオンズリーグ(CL)覇者でありプレミアリーグ4連覇中の王者を、持ち前のドリブルで大いに慌てさせた。
CLの優勝候補に対して存在感を存分に発揮した久保と三笘。いま世界のサッカーファンから、ふたりは日本を代表する看板選手と見られている。しかし現在の日本代表で、それぞれはウインガーとして起用されていない。三笘は左ウイングバックで、久保は2シャドーの一角としてプレーする。
インドネシア戦、中国戦のメンバーを発表する森保一日本代表監督 photo by Fujita Masato ウインガーがウイングのポジションに収まらないという問題。筆者には看過できない大問題に映る。三笘は左のウイングバックだ。右のウイングバックにもウインガータイプの堂安律を置く。サイドバックタイプではなく、ウインガータイプをウイングバックに据える森保サッカーを、一部のメディアは"超攻撃的3バック"と言って持ち上げるが、冗談はやめてほしい。
4列表記に落とし込めば3-4-2-1の4の左だ。サイドアタッカーは三笘ひとり。単騎で左サイドをほぼフルカバーする。一方4-2-3-1や4-3-3あるいは中盤フラット型の4-4-2になれば、その役をサイドバック(SB)と分かち合う。
サイドアタッカーひとりのサッカーとサイドアタッカーふたりのサッカー。この違いは「サイドを制するものは試合を制す」という格言に照らすと、いっそう重大な問題となる。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。