閑散とした国立競技場でなでしこジャパンが一変 日韓戦で感じたサッカー界の「組織の問題」
連載第12回
杉山茂樹の「看過できない」
日本が韓国に4-0で勝利した女子サッカーの日韓戦。曇天で気温も低めだったが、キックオフは土曜日の午後2時20分。舞台は日本で最もアクセスに恵まれた国立競技場となれば、スタンドは多くの観衆で埋め尽くされても不思議はない。3万人程度は集まるだろうと筆者は予想したものだが、甘かった。1万2420人。国立競技場の定員は約6万8000人で、最多入場者記録が6万5188人なので、スタンドの5分の4以上は空席だったことになる。
日韓戦は閑散としたスタンドに応援団の太鼓の音が響き渡る、寂しい雰囲気のなかで行われた。
昨年、ヴァンフォーレ甲府が、アジアチャンピオンズリーグで国立競技場をホームに戦っているが、その時は4試合の平均観衆が約1万4000人だった。今年の6月に行なわれたJFLのクリアソン新宿対FCティアモ枚方にも1万6480人の観衆が集まっている。
今年2月に行なわれた、なでしこジャパンのパリ五輪予選対北朝鮮戦は2万777人だった。この時の国立競技場には、北朝鮮のサポーターが大挙押し寄せていたので、ホームである日本側の観衆は、今回の日韓戦と同程度だったと思われる。1万2420人は不入りと言うより、なでしこジャパンの現状を端的に反映したスタンダードな数字と言うべきだろう。
パリ五輪では準々決勝でアメリカに敗れ、ベスト8に終わった。「女子サッカーの普及発展のためにもメダルを獲得して帰りたい」と大会前、選手たちは述べていた。しかし、メダルを獲得していたとしても、その凱旋試合として行なわれることになったはずのこの韓国戦に、大観衆を集めることができただろうか。
日韓戦でなでしこジャパンを指揮した佐々木則夫監督代行 photo by Fujita Masato パリ五輪を最後に退任した池田太前監督の後任は決まっていない。この日韓戦は、協会の女子委員長の座に就く佐々木則夫氏が監督代行として采配を振るった。突っ込みどころの多い試合と言えた。スタメンには五輪で中心選手として活躍した選手がずらりと並んだ。欧州組を招集できなかった韓国とは対照的だった。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。