サッカー日本代表で際立つ「大卒」選手 ただ、欧州トップ10クラブでプレーするために必要なのは?
連載第11回
杉山茂樹の「看過できない」
W杯アジア3次予選のサウジアラビア戦、オーストラリア戦にフルタイム出場を果たした守田英正。主将の遠藤航がオーストラリア戦を欠場したこともあり、現在の代表チームにとって、誰よりも欠かせない中心的な存在に映った。
一方、今週行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)シュトゥルム・グラーツ戦(アウェー)ではその強行軍による疲労を考慮されたからだろうか、後半25分からの出場にとどまっている。
アジア予選とCL。試合のレベルが高いのは後者である。選手の成長を促すのも後者だとすれば、選手のCL出場をあと押しすることも日本代表監督の使命になる。それも強化の一環だと考えるべき時代を迎えている。予選突破が見えてきたいま、しかも代表ウィークの翌週に早くもCLが組まれる超ハードな試合日程を踏まえると、なおさらである。メンバー招集は中心選手ほどローテーションで行なうべし、と言いたくなる。
日本代表でも中心的存在となった守田英正(スポルティング)は29歳 守田の話に戻れば、代表戦前のCL、PSV戦では格別なプレーを披露した。3-4-3のセンターハーフとしてスタメンを飾り、ゲームメーカー然とシャレの効いた創造的なパスを何本も決めていた。もうワンランク高いクラブでも十分通用しそうな余裕溢れるプレーだった。
ただ一方、29歳という年齢を考えると欧州市場で階段を上ることは難しく見える。遅咲きと言えば、昨季、30歳の時にシュツットガルトからリバプールへ"2階級特進"を果たした遠藤航の例があるが、それは例外中の例外だ。遠藤とて、リバプールの"次"を見つけることは容易ではない。
現在はケガで離脱中だが、冨安健洋、伊藤洋輝がアーセナル、バイエルンというリバプールと並ぶ欧州のトップ10クラブに移籍することができたのは、年齢が低かったからだ。市場価値は若いほど高値がつく傾向にある。育てて売る。購入金額を上回る金額で売却することが可能なのだ。金銭的なうま味は守田より彼らのほうにある。
欧州組のなかで最も華々しい活躍を見せている三笘薫(ブライトン)も27歳だ。微妙な年齢を迎えている。もう4年若ければ、たとえば久保建英(レアル・ソシエダ)と同じ年齢ならば、もうブライトンにはいないかもしれない。CLに常時出場する欧州トップ10クラブでプレーしていたとしても不思議はない。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。