サッカー日本代表の最大値を森保監督は引き出しているか? サウジアラビアに序盤で苦戦した理由
サウジアラビアにアウェーで2-0。日本はW杯アジア3次予選C組で勝ち点を9(得点14、失点0)に伸ばした。オーストラリア、サウジアラビア、バーレーンが勝ち点4で追うが、独走状態に入ったと言っていい。滑り出しで躓いた直近の2大会とは180度異なる余裕の展開になっている。
アジア枠が8.5にほぼ倍増したことを考えると、予選落ちはあり得ない状況だ。3戦を終了した段階で、W杯本大会出場8回連続出場はもうそこまで見えている。現時点でこれだけ余裕がある国は、世界を見渡しても見当たらない。
最大の敵と目されたサウジアラビアでさえ、怖いチームではなかった。ホームでもう一度戦っても敗れることはなさそうな、手応えの少なさだった。それはチームが"成長できにくい環境"に置かれていることを意味する。贅沢な悩みと言えばそれまでだが、目標値であるW杯準々決勝から逆算すれば、喜ばしい事態とは言えない。
つまり、日本は世界で他に例がない新局面を迎えている。異常事態と言ってもいいこの「緩すぎる環境」とどう向き合うか。逆にどう活かすか。
サウジアラビアを破り、笑顔の日本代表選手たち photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る サウジアラビア戦の日本の布陣は従来同様3-4-2-1で、スタメンは以下のとおりだった。
GK/鈴木彩艶、CB/町田浩樹、谷口彰悟、板倉滉、ウイングバック/三笘薫、堂安律、MF/守田英正、遠藤航、シャドー/鎌田大地、南野拓実、CF/上田綺世。
対するサウジアラビアは4-3-3で対峙してきた。日本と同じ5バック的な布陣でくるとの予想もあったが、セオリーに従った格好だった。世界的に見て、5バックになりやすい3バックがより、4-3-3、4-2-3-1がなぜ多数派か。それぞれがマッチアップした際に生じるズレが、攻撃的サッカーに有利に現れる傾向にあるからだ。
実際、サウジアラビアは前半、いい感じだった。日本は本領を3割程度しか発揮できないサッカーに陥っていた。「これのどこが超攻撃的3バックなのか」と突っ込みを入れたくなるほど、守勢に追いやられた。堂安、三笘の両ウイングバックは案の定、後方待機を強いられた。相手の両ウイングの動きに牽制され、ウイング色よりDF色の濃い、低い位置でのプレーを余儀なくされることになった。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。