サッカー日本代表「元・三銃士」堂安律はまったくの別人になった「自分は意外と気を遣える選手」 (2ページ目)
【久保は考えずにやったほうがいい】
堂安は言う。
「タケがボールを受けたがる選手なのはわかっているので、僕もそれをしちゃうとチームとしての距離感が変わっちゃう。彼のよさを活かしつつ、自分はゴール前でポジションを探しながらプレーするのも得意なので」
味方を活かしつつ、自分も関与するポジションを探すことができること自体を、今の堂安は自分のよさとして認識している。
「左は(三笘)薫くんという強力な個があるので、右は連係を出して、違う形で攻めるというのは、チーム戦術として落とし込んでいる」
久保とのコンビネーションからのチャンス創出こそが左との違いだ、と胸を張った。
「タケは好きに動いているほうが、彼のよさが出る。彼は考えずにやったほうがいいし、自分は意外と気を遣える選手なので」と、笑いを誘いつつ、「薫くんとか僕が動いて、拓実くんやタケがフリーになっていることもある」と強調した。
もちろん、久保を生かすだけでなく、自身もゴール前で存在感を見せた。11分には右に出た久保のクロスに合わせヘディングシュート。前半終了間際にはまたも右サイドに張った久保が、突破を警戒されるなか、やや内側に堂安へパスし、これを堂安は左足で逆サイドにクロスを入れ、走り込んだ三笘がヘディングで決めて2-0とした。
「ウイングバックがあそこに入れば必ず点が取れるということは、自分は受け手としても意識している」と、久保との好連係を強調した。
一方の久保も、この日は堂安を意識したと強調した。
「堂安選手をひとりにしないことを意識しました。(自分が)大人になったというのがひとつ。僕が、僕が......でなくて、サッカーはあくまでチームスポーツ。今回はいろんな選手のよさを出すことを意識しました。三笘選手ならシンプルに、堂安選手ならコンビネーションでよさを出せば、逆に彼らも僕を活かしてくれる」
堂安もアシストを記録し、久保もこの日の7点目を決め、チームとしても彼ら個人としても満足のいく試合になった。
互いに気を遣い合ったことが功を奏した一戦ではあった。だが、相手が代わって試合の強度が上がったらどうなるのか──。手放しで喜ぶわけにはいかない最終予選の滑り出しとなった。
著者プロフィール
了戒美子 (りょうかい・よしこ)
1975年生まれ、埼玉県出身。2001年サッカー取材を開始し、サッカーW杯は南アフリカ大会から、夏季五輪は北京大会から現地取材。現在はドイツを拠点に、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材中。著書『内田篤人 悲痛と希望の3144日』(講談社)。
【図】サッカー日本代表・識者が考察したアジア最終予選のベスト布陣
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