五輪オーバーエイジは必要か?(2) 2016年リオ・手倉森誠は「ハリル監督から『いいチョイス』と言われたが...」
サッカー五輪代表「オーバーエイジ」を語る(2)
2016年・リオデジャネイロオリンピック〜手倉森誠の場合
◆反町康治〜2008年・北京五輪「U-23世代ではどうしても足りないところがあった」
パリ五輪に出場するU-23日本代表メンバー18人が、7月3日に発表される。
かねてから話題となっているオーバーエイジには、誰が指名されるのだろう。交渉難航が伝えられているなかで、3人の枠を埋めることはできるのか。それとも、「1」か「2」か。あるいは、「0」で臨むことになるのか。
2016年リオ五輪では当時30歳の興梠慎三をオーバーエイジ枠で招集した photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る かつて同じ悩みに直面し、大きな決断を下した監督に聞く。
2016年のリオ五輪で采配をふるった手倉森誠監督である。現在はタイ1部リーグのBGパトゥム・ユナイテッドを指揮しており、2023-24シーズンはリーグカップを制した。
「リオ五輪で決勝まで勝ち上がると、帰国は8月23日になる予定でした。その5日後の28日からワールドカップ最終予選に臨む日本代表が活動をスタートさせる。そういう状況だったので、(ヴァイッド・)ハリルホジッチ監督からは、『最終予選に絡む選手はオーバーエイジで呼ばないでほしい』とのリクエストがありました」
9月1日のUAE戦は最終予選の初戦で、6日にはアウェーでタイ戦がある。手倉森監督は日本代表コーチを兼任しており、9月の連戦の重要性は理解した。ハリルホジッチ監督からの要請を受け入れたうえで、手倉森監督は清武弘嗣をリストアップする。
「我々のチームはU-20ワールドカップの出場を逃した選手たちで構成されていて、アジアで勝てない世代と言われた。五輪予選ではアジア王者になったけれど、世界大会を知らない選手たちが多い世代を引き上げるために、オーバーエイジ枠を使うというのが自分なりの位置づけでした。
五輪に出場経験のある日本代表選手を含めて、DF、MF、FWにひとつずつ、という構想を描いたのです。清武は2012年のロンドン五輪で悔しい思いをしているし、五輪の短期決戦も経験している。国際試合ではセットプレーの重要性が高まり、そのキッカーとしても期待できる選手でした」
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著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)