澤登正朗はドーハ入りし「W杯に行ける」と確信。しかし、なぜ出番が訪れなかったのか (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

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 食事のテーブルでは先輩に気を遣いつつ、多くの選手と積極的にコミュニケーションを図った。また、遠征の際には澤登ら若手が空港での荷物の出し入れを率先してやった。

「今はエキップメントがいて全部やってくれますけど、僕らの時代は選手が協力して荷物を運んでいました。僕は当時、一番下っ端だったんで、何回もターンテーブルとバスを行き来しました。それがふつうでしたね。

 練習でもボールを全部拾って片づけるとか、それも当然のようにやっていました。そういうのを自分たちの前の先輩たちがやってきていたので、それが染みついていたんでしょうね」

 だが、ピッチに立てば先輩・後輩関係なく、自らをアピールし、先輩たちにも遠慮せずにさまざまな要求をした。

「カズさんがボールを持っている時には、『カズ、出せ』ってふつうに言っていました。(ピッチ上では)それが当たり前ですし、ピッチ上と外ではきちんとメリハリがついている感じでしたね」

 そうして、澤登は一歩ずつ、代表チームに溶け込んでいった。

 W杯アジア一次予選の第1ラウンドは、日本で集中開催された。タイ(1-0)、バングラデシュ(8-0)、スリランカ(5-0)、UAE(2-0)と対戦。澤登は初戦のタイ戦で途中出場し、代表デビューを果たした。その試合以降も途中出場ながら、4戦中3試合に出場した。

 第2ラウンドはUAEで開催され、日本はタイ(1-0)、バングラデシュ(4-1)、スリランカ(6-0)と順当に勝利し、地元UAEとの対戦を迎えた。6点以上の差をつけられて負けなければ、最終予選への進出が決まる。

 その試合を前にして、澤登に日本から身内の訃報が届いた。

「僕の祖父がなくなって、『帰るか?』とスタッフに聞かれたんですけど、『それはない』と即答しました。ただその分、がんばらないといけないと思っていましたね」

 そして試合前日、スタメンで出場予定だった福田正博が体調不良で練習に不参加。澤登はオフトから「スタメンで行くぞ」と言われ、「よし、やってやろう」と意気込んでいた。

 しかし、試合前のミーティングでスタメンには福田の名前が記されていた。

「(スタメンが)発表された瞬間、『福田さんかよ』って思いました。(先発で出る)気持ちの準備をしていたので......。でも、だからこそ、途中から出場した時には『やらなきゃ』という思いが強くなりました」

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