コパ・アメリカで日本代表が突きつけられた深刻な課題 (5ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Watanabe Koji

 そして、経験よりも勝ち点を重視したと思われる指揮官のベンチワークである。

 試合展開の推移から見た場合、この試合の最初のターニングポイントは、後半開始からエクアドルが1枚を代え、システムを4-1-4-1から4-2-3-1に変更したことだった。その後の約20分間、日本は1度のチャンスも作れず、逆にエクアドルは決定機こそ作れなかったものの、確実にリズムをつかむことに成功している。

 しかし森保監督は、具体的な修正を指示することもなく、66分の選手交代まで動くこともなかった。しかもその交代策は、岡崎に代えて同じポジションに上田綺世を投入したのみ。たしかにその後、日本は流れのなかから2度チャンスを作ったが、試合の流れを変えるには至らなかった。

 次に動いたのは三好を安倍に代えた82分。さらにその6分後にはボランチの板倉滉を下げて前田大然を前線に投入し、攻撃枚数を増やして勝負をかけている。これは過去2試合とは明らかに異なる選手交代策で、そこに経験よりも勝ち点を重視した形跡が見て取れる。ただ、勝ち点3を狙うにはあまりにも遅すぎた交代策だった。

 一方、エクアドルを率いるエルナン・ダリオ・ゴメス監督は83分に3枚目のカードを切り終えると、最後はセンターバックのアルボレダが攻撃に参加するなど捨て身の攻撃でゴールを目指した。日本が試合終了間際に作ったビッグチャンスは、そんなスクランブル状態で生まれたものだった。

 いずれにしても、東京五輪を目指すチームの本格的強化は今大会からスタートしたばかり。二足のわらじを履く森保監督には、これから2022年のカタールW杯予選本番を迎えるA代表と、東京五輪を目指すU-22代表の2チームを、同時に強化しなければならないという難しい問題に直面することになる。

 それも含めて、森保監督が両チームともに4-2-3-1をメインとし、3-4-2-1をオプションとして強化する決断を下した可能性は高いと見ていい。

 では、オプションの3-4-2-1はどんな戦況で使おうと考えているのか。今後の両チームの試合を見ていくうえで、そこも見逃せない注目ポイントになる。

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