2019.03.09

小野伸二にとって「歴代代表監督の中で
トップ」はトルシエだった

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 小野は、サブとレギュラーがこれほどまでに一体化したチームを経験したのは、初めてだったという。そしてそれ以降、2002年日韓共催W杯、2004年アテネ五輪、2006年ドイツW杯などの世界大会にも出場したが、これほどまとまったチームを経験することはできなかった。

「あれだけ、試合に出ている選手と出ていない選手がひとつになるというのは、なかなかあることではない。今までサッカーをやってきて、このときほど一体感を感じられたことは、”日本代表”という立場ではなかったですね」

 一体感の醸成は、トルシエ監督という指揮官の存在もとても大きかった。

 トルシエ監督は、今の時代であれば、パワハラで訴えられてもおかしくないほどの、高圧的で、威圧的な言動を繰り返していた。ファイトする姿勢が表立って見えない選手に対しては、胸ぐらをつかみ、罵声を浴びせた。ゆえに、最初は露骨に嫌な表情を見せ、文句を言う選手も絶えなかった。

 ただ、時間が経過するにつれて、選手たちもトルシエ監督の対応に慣れ、その対処法をつかんでいった。そのうち、選手と監督との間にも、徐々に”あうんの呼吸”のようなものが出来つつあった。

 そんなトルシエ監督から、小野は大きな影響を受けたという。

「トルシエ監督は(試合に向けての)ムード作りがすごくうまかった。練習ではいつもピリピリとした空気のなかでやれていたし、試合直前のスタメン発表まで誰が試合に出るのかわからない雰囲気を作ってくれたので、レギュラー選手でさえも『もしかしたら外されるんじゃないか』という緊張感を、常に保つことができました。

 たしかに最初はみんな、トルシエ監督のやり方に対してブーブー言っていましたね(笑)。日本人って、怒られるのが嫌いじゃないですか。でも、トルシエ監督はその怒り方もすごくうまいんですよ。それで、選手がピリッとするし、『何くそ!』って思って、選手みんなが団結していくんですよね。