「ポスト・長谷部」は誰か?ジュビロ・田口泰士はその有力候補だ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 たとえば中盤の球際、(相手に)ガツガツ来られるのは嫌いじゃないんですよ。『絶対にボールを取られない』という感覚のときがたまにあるんですけど、そのときはずっと先の風景が見えて......。"世界の中心に立っている"と感じるんです。毎試合、そうなればいいんですけどね」

 訥々(とつとつ)とした話し方だったが、胸の中にはとんでもないサッカーへの熱さを抱えていた。そのおかげだろう。プロでの出足は遅かったが、4年目にポジションをつかみ、5年目で中心選手になった。

「まー、見てるばやー!(どこ見てんだ!)」

 ピッチ上で田口の声が響く。周りが見えていないプレーには口さがない。プレーに対しては、誰よりも正直に向き合う男である。

 もともとセンスはあったが、守備も上達した。パスコースを切り、侵入を許さず、防御線を作り出せるようになった。仲間を使い、コンビネーションを使った形でボールを奪い返せるようになっている。

 昨シーズンまで9年間在籍したグランパスを退団。今シーズンからは心機一転、多くのオファーの中からジュビロを選んだ。そして、すぐにチームの舵取りを任せられ、攻守でチームを動かしている。

「次のワールドカップ? 俺はそんな選手じゃないっすよ。サッカーを楽しめれば、それで十分です」

 田口は相変わらず功名心を見せず、本心をはぐらかす。

「勝負は大事だけど、サッカーを楽しむことは忘れないようにしています。"チームのため"という気持ちはあるし、そういう心構えは当然、持っているつもりです。

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