2012.12.31

ロンドン五輪決勝で、宮間あやの涙が止まらなかった理由

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko/JMPA

ロンドン五輪で史上初となる銀メダルを獲得したなでしこジャパンプレイバック ロンドン五輪/女子サッカー

宮間あやは、半年間、ずっと思い悩んでいた。
北京五輪のようなチームにしたい――。だが、理想と現実は、大きくかけ離れていた。

原因はひとつじゃない
珍しく苛立った初戦

 これまで張りつめていた感情が解き放たれた。決勝戦の敗戦を告げるホイッスルが鳴り響いた瞬間、宮間あやはゆっくりと足を止めた。しばらくして、健闘を讃えるために仲間のもとへ歩みを進める。握手やハイタッチではなく、抱擁を繰り返した。澤穂希と抱き合ったとき、目を閉じて腕により一層力をこめた。その背中を追い、肩を並べて走ってきた。もう、涙を止めることはできなかった。号泣――。これまで抑えていた宮間の感情が溢れ出した。

 キャプテンマークをその腕に巻いて、わずか半年。「キャプテンなんて、陣地取りのジャンケンをするだけ」と、軽口を叩いてきた。その言葉どおりでないことは、誰もが知っている。2011年のワールドカップ優勝から宮間が辿りつきたかったのは"全員が全員のために懸命なサッカー"ができるチームだ。ワールドカップでは優勝したものの、チーム全体としてのピントが、少しズレている感覚はぬぐえなかった。しかし、突如の『なでしこブーム』。盛り上がれば盛り上がるほど、宮間は反比例するように冷静になっていった。

 思い描いていたのは、北京五輪のようなチームだった。仲間の痛みを自分の痛みとして感じ、常にチームのためを思って自分を投げ出す。そんなチームだった。そこにいた宮間は、サッカーを楽しんでいるのが手に取るように伝わってきた。

 しかし、自分が牽引する立場になった北京五輪以降、彼女は感情の起伏を抑え込むようになった。それはプレイの面でも同じだった。もちろんアベレージは世界トップレベル。だが、すべてが〝想定内〟。それでも結果はついてきた。いや、だからこそ、理想を追いたかった。ワールドカップ優勝後には、その想いはさらに強まった。まだぎこちないチームで世界一を獲ったことに戸惑ってもいた。