【五輪代表】44年ぶり快挙の舞台裏「俺たちがひとつになった瞬間」 (2ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao
  • photo by JMPA

 一方、キャプテンを務めたもうひとりのオーバーエイジである吉田は、準々決勝のエジプト戦に勝利したあと、チームの躍進についてこう話した。

「正直(壮行試合の)ニュージーランド戦のあたりは"明るさ"と"軽さ"が紙一重で、危ないなと思っていた。例えば、(A代表では)ミーティングで私語とかはありえない。ただ、このチームには何でも言い合える雰囲気があった。そのよさを生かして、意見があればどんどん言うようにした」

 五輪開幕を控え、ピッチ内外でどこか甘さのあったチームを引き締めたのは、吉田だった。ぶつかり合う意見をまとめ上げて、ひとつの方向に向かわせた。

「スペイン戦の勝利が大きかったのは確かですね。あそこで勢いに乗ったこと、いわゆる強豪を叩いたことで、みんなが自信を持てた。それから、チームは急激に進化していった。そのスピードには、僕自身、すごく驚いた」

 吉田はチームを厳しく統率するだけでなかった。持ち前のユニークなキャラクターを生かして周囲に隙を与えることで、時にチーム全体を和ませた。「マヤ」と呼び捨てにされることも厭(いと)わなかった。エジプト戦で貴重な追加点をマークしたときには、冗談めかしてこんなことを言っていた。

「やっと決められてよかったです。もう清武(弘嗣)さんに散々怒られて大変だったんですから(笑)。グループリーグのときから何回も外していたんで『いい加減、ヘディングは叩きつけてください』って言われたんですよ」

 チームの雰囲気のよさが伝わるエピソードだった。

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