甲子園を目指さない高校球児も急増。「負けたら終わり」のトーナメントは時代錯誤なのか (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 そこで阪長は全国の高校野球指導者にリーグ戦の導入を訴えてきた。大阪や新潟、長野、群馬などから賛同する高校が現れ、各地で秋に『リーガ・アグレシーバ』として開催されている。

「たとえば10チームが参加して4つが決勝トーナメントに行けるという場合、先発投手のローテーションを組めたり、何勝何敗くらいだったら4位以内に入れるだろうと考えられたりします。だから監督は、ピッチャーの起用をしやすくなると思います」

 リーガ・アグレシーバの肝は、球数制限や低反発バットの採用、スポーツマンシップ講習会の実施などを行なうことだ。球数や変化球の制限を含め、指導者たちがルールを決める。そうして高校生が成長できる環境をつくり出そうとしている。

 参加校の立命館宇治高校では、公式戦で登板機会のなかった1年生投手が起用され、自信を深めて伸びたという。彼らは立命館大学進学後まで見越して野球をできる環境にあり、リーグ戦のメリットは計り知れないだろう。

問われる甲子園のあり方

 反面、予定どおりに実現できなかった地域もある。当初の参加予定校はいずれも甲子園出場を視野に入れる私学だったが、そこに公立が入ってくることになり、全体のレベル低下を懸念して参加をとりやめるチームが相次いだ。

 リーグ戦という方式に賛同できても、低反発バットの採用は直接的な強化に結びつくとは考えられない。それも参加を見送った一因だったという。私学の監督、とくに教員免許を持たない者の場合、結果を出せなければクビが飛ぶというシビアな事情もある。

「できない理由はいろいろあると思います」

 阪長はそうした現実を踏まえ、新たな提案を口にする。

「現在、大阪の高校野球では180校以上参加して、本気で甲子園を目指しているのはおそらく10校くらいだと思います。ネット上では『リーグ戦なんてできない』という意見もありますが、そもそも甲子園をやるうえでリーグ戦をしようと考えたら『できない』となる。でも、全校が甲子園を目指さなくてもいい。カテゴリー分けをして、『自分たちはここのカテゴリーで、ここを目標にする』としてもいいと思います。

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