2021.02.02

江本孟紀がセの弱体化に物申す。「ソフトバンクのコーチ人事を学べ」

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

特集『セ・パの実力格差を多角的に考える』
第1回 コーチ人事

 セ・パの格差が指摘される近年のプロ野球で、とりわけ際立つのがソフトバンクの強さだ。日本シリーズでは過去10年で7度制覇と、圧倒的な成果を残している。

「ソフトバンクの"1強"は続きますよ。このチームにも弱点はあるけど、プレーオフ制度があることで、弱点が逆にプラスになっている」

 そう指摘するのは、野球解説者の江本孟紀氏だ。ウイークポイントを強みに転換させるチームづくりこそ、ソフトバンクと他球団の違いだという。

巨人投手チーフコーチ補佐に就任する桑田真澄氏(右)[球団提供]巨人投手チーフコーチ補佐に就任する桑田真澄氏(右)[球団提供] 「ソフトバンクの弱点は、1年間フルに戦える選手は少ないこと。だからこそ、ひとりひとりの"駒"が『次に出るのは俺だ』と虎視眈々と競争している。チームとして、そういう仕組みをつくり上げています」

 昨季のソフトバンクで100試合以上に出場したのは6人。プロ野球ではよく「3年活躍して一人前」と言われるが、ソフトバンクで過去3年続けて100試合以上に出たのは松田宣浩と甲斐拓也のみ。意外と不動のレギュラーは少ない。

 逆に言えば、それほど競争が熾烈だ。柳田悠岐や中村晃が故障などで戦線離脱しても、そこを埋める若手が出てくる。

 たとえば今宮健太がショートのレギュラーを外れた昨季、その穴をカバーしたのが育成出身の周東佑京と牧原大成だった。とくに周東は50盗塁で同タイトルを獲得したばかりか、打率.270を残し(※規定打席に達しなかったが、打率だけを見ればリーグ14位相当)、今宮が危機感を口にしたほどだ。

 選手たちを切磋琢磨させて新戦力が次々と台頭するから、短期決戦で多彩な戦い方をできる。それこそ江本氏が言う「弱点をプラスにする」チームづくりだ。

 こうした仕組みを築き上げた裏には、ソフトバンク独特の「人事」がある。江本氏が説明する。

「プロ野球ではどこも、コーチの起用は"温情人事"ばかり。現役時代にチームに貢献したとか、FAで移籍してきたからとか、人脈でコーチにすることが多い。"ご褒美"で人事をやっているから、チームに緊迫感がない」