マネーボールの申し子。楽天新加入のユーキリスはこんなにすごい (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 結局、ユーキリスは2001年のドラフト8巡目(全体243位)でレッドソックスに入団。しかし、ビーンGMの頭の中には常にユーキリスの存在があった。何度も大物選手をエサにユーキリスの獲得を狙うも、当時レッドソックスのアシスタントGMだったセオ・エプスタイン(現カブス球団社長)がすでにユーキリスの価値に気付いていたことで実現せず。獲得は果たせなかった。

 そのユーキリスだが、著者であるルイスが"四球のギリシャ神"と命名した通りの活躍を見せていく。2003年に2Aでマイナーリーグタイ記録となる71試合連続出塁を達成し、2004年にメジャーに初昇格。2006年にレギュラーに定着し、打率.279ながらも92個の四球を選び、出塁率.381をマーク。2007年も出塁率.390をマークし、ワールドシリーズ制覇に貢献。2008年には自己最高の打率.312、29本塁打、115打点をマークし、ハンク・アーロン賞を獲得した。また、2009年、2010年は出塁率が4割を超えるなど、チームの中軸として活躍した。

 ユーキリスの昨年までのメジャー通算成績は、1061試合に出場し、1053安打、打率.281、150本塁打、618打点、出塁率.382。

 これまで来日したボブ・ホーナー(1978年新人王)、レジー・スミス(メジャー通算314本塁打)、ビル・マドロック(首位打者4回)、フリオ・フランコ(首位打者1回)、ケビン・ミッチェル(本塁打王1回、打点王1回、1989年ナ・リーグMVP)、さらには昨年楽天に入団したアンドリュー・ジョーンズ(本塁打王1回、打点王1回)といった選手のような派手さはない。しかし、献身的にチームプレイに徹する姿は、これまでの大物助っ人にはない魅力を持っている。ユーキリスは日本行きを決めた理由をこう語った。

「新しいことに挑戦せずに人生を振り返ることをしたくなかった」

 ケーシー・マギー、田中将大がチームを去ったが、ユーキリスの加入でファンはおろか、選手たちも勇気を与えられたはずだ。はたしてユーキリスはチームにどんな化学反応をもたらすのか。いずれにしても、ジョーンズとユーキリスが並ぶ打線を日本で見られるだけでも幸せなことだ。

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