西岡剛がタイガースにもたらした「化学反応」 (2ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 決して勢いに任せた走塁ではない。西岡の中では計算し尽くした走塁だったのだ。

 計算といえば、頭脳的な走塁でチャンスの芽を摘まなかったこともある。4月9日、今シーズン初めての巨人戦(甲子園)。6回無死から二塁打で出塁すると、2番・大和の送りバントで三塁へ......行きかけたが、アウトになるタイミングと判断し、三塁手前でストップ。二、三塁間にわざと挟まれて、大和を二塁まで進塁させた。「一死一塁より一死二塁の方がいいから」と西岡。この後、マートンと福留孝介に連続タイムリーが出て、2-0で巨人に勝利した。

 西岡の好走塁を挙げればキリがない。最近では、5月11日のヤクルト戦(松山)で、3回一死から出塁し、大和の三塁ゴロでなんと三塁まで進んでみせた。サード・宮本慎也が前進して捕球し、送球する間に三塁ベースががら空きになっているのを見逃さずに走ったものだ。久慈照嘉内野守備走塁コーチは、「次に何が起きるかを想定していないとできない走塁。センスもあるけど、若い選手には"隙あらば"というところを見習ってほしい」と話す。

 和田監督は今季のテーマに「走塁革命」を掲げていたが、それはすでに数字にも、数字以外の部分にも表れている。チーム盗塁数は、40試合を消化した5月15日時点で23個。広島の48個には遠く及ばないが、それでも昨年同時期の13個からすれば、ほぼ倍増だ。隙を突く走塁という意味でも、一塁走者がワンバウンド投球を見てすかさず二塁を陥れたり、ワンヒットで一塁から三塁へ進んだり。もちろん、これまでも「ひとつ先の塁を狙う」意識は持っていたのだろうが、今年はそれが実際のプレイに顕著に表れている。今季ここまで(5月15日現在)阪神は23勝16敗1分の2位。巨人を2.5ゲーム差で追っている。そこに、西岡の存在があることは明らかだ。

 そんな西岡の影響を最も受けているのは、西岡と1、2番コンビを組む大和だろう。

「ツヨシさんには、気持ち的にすごく楽にしてもらっています。僕がミスをしても、『オレがカバーしてやる』と言ってくれるので、今年は失敗を恐れずに、前を向いてやれています」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る