【WBC】不安な先発投手陣を史上最強打線が援護する韓国の実力 (3ページ目)

  • 慎武宏●取材・構成 text by Shin Mukoeng
  • photo by Masuda Yuichi

―― 理想的な継投は? 韓国の勝ちパターンを予想するとどうなりますか?

「尹錫珉、張洹三といった先発ができるだけ長いイニングを投げて、朴熙洙が4回から6回を抑え、次のリリーフ陣につなげる。例えば、鄭大炫(チョン・デヒョン)です。彼は代表経験が長く、ストッパー出身であるため、危機的状況にも怯(ひる)まず、肝が据わっています。右のアンダースローなので球速はさほど速くはないですが、緩急をつけたピッチングで相手に的を絞らせないんです。また、車雨燦(チャ・ウチャン)のようにスピードとパワーで相手を圧倒できる投手もいます。そして9回からは昨シーズン37セーブを上げた国内最高ストッパーの呉昇桓が締めくくる。これが韓国の勝ちパターンとなるでしょうが、誰が先発することになっても、次の試合の先発以外のすべての投手をブルペンに待機させるでしょうね。球数制限のあるWBCのルール上、そして韓国代表の実情と照らし合わせてみても、リリーフ陣がもっとも大切なポイントになるということを、監督をはじめすべての関係者たちが自覚していますから」

―― 野手陣のほうはどうでしょうか。投手陣と対象的に、打線は“史上最強”と言われているようですが?

「野手陣は本当に心強い。特に内野陣は韓国最高の選手が揃ったと言えます。パ・リーグ打点王の李大浩(イ・デホ)、韓国リーグ首位打者の金泰均(キム・テギュン)、そして、ここ一番に勝負強い国民的英雄の李承燁(イ・スンヨプ)。彼らが打線の核であり、チームの中心と言えます。現役メジャーリーガーの秋信守は抜けましたが、外野陣には2年連続打率3割5分以上を記録して“打撃機械”と呼ばれる金賢洙(キム・ヒョンス)、2年連続3割を記録した孫(ソン)アソプなど、若い力も台頭しています。ふたりは国際経験の少なさに不安がありますが、若さを生かしたエネルギッシュなプレイで韓国打線をリードしてくれるだろうと期待されています」

―― 投手陣に不安があるも、打線は強い。それが今大会の韓国代表の特長と見ていいですか?

「ええ。そして、チームワークでしょう。韓国は伝統的にチームワークが良く、今回は投手陣に不安があると誰もが自覚しているので、選手各自が自分の役割、自分の責任を果たそうと今まで以上に努めるはずです。2月13日から始まった台湾合宿を見るかぎり、これは皮肉なことですが、メジャー組や主力が抜けたことで結果的に、チームワークは過去にも増して高まっている印象です。しかも、精神武装もされています。私が見るに、WBC参加チームの中でもっともモチベーションが高いのは、韓国ではないでしょうか。『WBCはプレッシャーだが、いざ代表のユニフォームを着ると燃えてくる』というような話を、多くの選手たちが口にするのです」

―― では、ズバリおうかがいします。今大会で韓国代表の成績は?

「ベスト4進出を期待したいところですが、今回ばかりは簡単ではないでしょう。カギを握るのはやはり投手陣ですし、その投手陣が崩壊し継投も思うように行かなかったら、最悪の場合、アメリカに行けない可能性もあると思います。台湾、オーストラリア、オランダと戦う第1ラウンドは問題なく突破するでしょう。ただ、第2ラウンドで待ち受けているのは、おそらく日本とキューバです。いかなる国も彼らとは対戦したくない強敵ですし、韓国は、そのどちらか一方に勝たなくてはならない。韓国にとって、これは高く険しいハードルです」

<後編につづく>

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