大谷翔平も『ONE PIECE』ルフィに反応 ドジャースが『鬼滅の刃』など日本の人気作品とコラボする理由 (3ページ目)
【日本作品とのコラボイベントはドジャースの多様性の証】
日本生まれの漫画・アニメやキャラクターとのコラボイベントが増えている背景には、多様な文化を積極的に取り入れてきたドジャースの長年の戦略がある。
1年前にスタン・カステン球団社長にインタビューした際、「4月はYOSHIKI、7月はCreepy Nutsと、日本人アーティストを招いて球場で演奏させる狙いは何ですか」と尋ねたところ、彼はこう答えた。
「ドジャースはこれまでも国際的なイベントを頻繁に開催してきました。ロサンゼルスは世界で最も多様なコミュニティを持ち、さまざまな文化や背景を持つ人々が暮らしている。私たちは球場で、異なる伝統や文化を称えるイベントを行なってきたのです」
現在、その流れは大谷、山本といった日本人スーパースターの加入と活躍によって、さらに加速している。ここに文化的な親和性の高い日本発の人気キャラクターを組み合わせることで、野球ファン以外の層にも効果的にアプローチできる。
結果として、これまで野球に興味のなかった人々も球場に足を運び、そこで得た特別な体験をきっかけに「また来たい」と思うようになる。この好循環こそが、ドジャースがアニメとのコラボイベントを積極的に行なう大きな理由だ。
それにしても圧倒的なのは、SNSを通じた情報拡散力だ。アニメやキャラクターのファンコミュニティは発信力が非常に高く、イベント告知や現地で撮影した写真・動画が自然発生的に広がっていく。特に大谷や山本のような世界的スターと人気キャラクターが同じフレームに収まれば、スポーツメディアにとどまらず一般ニュースやエンタメ媒体にも取り上げられ、その宣伝効果は一気に拡大する。
こうした流れの背景には、「推し文化」の巧みな活用がある。
「推し」とは、アイドル、漫画やアニメのキャラクター、俳優、スポーツ選手など特に熱心に応援する対象のこと。「推し文化」は、その対象への応援や支持を軸に、生活や消費行動が形成される現象を指す。もともとはアイドルやアニメの世界から生まれた概念だが、近年ではスポーツ選手や実在の人物にも広がり、国境を越えて共感を集めている。
「推し」を持つファンは、そのモチーフを使った公式グッズやコラボ商品を積極的に購入し、試合やイベントなど直接「推し」に会える機会があれば遠方への移動もいとわない。さらにSNSで写真や動画、感想を発信し、ファン同士で交流する。この好循環こそが、イベントやコラボの波及効果を何倍にも高めているのだ。
つづく
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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