ムーキー・ベッツ戦線離脱から約1カ月 1番・大谷翔平のドジャース打線の現状は?

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

1番に入ってからさらに調子上げている大谷翔平 photo by AP/AFLO1番に入ってからさらに調子上げている大谷翔平 photo by AP/AFLOこの記事に関連する写真を見る

 6月の中旬、ロサンゼルス・ドジャースは攻守の柱であるムーキー・ベッツと山本由伸が立て続けに戦線離脱。ナ・リーグ西地区では変わらず2位を大きく突き放し、首位を走っているが、チームの現状はどうなっているのか。

 まずは打線と守備から見ていく。

*本文中の記録は現地時間7月5日(日本時間6日)現在

【大谷とフリーマンの左打者が離れた効果】

 6月16日、ドジャースの攻守の主力、ムーキー・ベッツと山本由伸が相次いで戦線を離脱した。ベッツは左手骨折で復帰まで6~8週間。山本は右肩腱板損傷で、2週間はノースローとの発表だったが、7月5日時点(日本時間6日)でまだ投げていない。山本は3日、「重症ではないが、復帰の見通しはわからない」と話している。

 大谷翔平はふたりの離脱について当初「特にケガ人が多くなる時期ではあるので、全員でカバーしたい。不幸中の幸いでムーキーも由伸も、シーズン中に戻ってくると思うので」と前向きにコメントしていた。

 ドジャースは7月5日終了時点で54勝35敗、ナ・リーグ西地区の首位で2位のサンディエゴ・パドレスに6.5ゲーム差をつけている。現有戦力でも地区優勝は可能だろう。問われるのは、短期決戦のポストシーズンでも勝てるチームを作れるかどうか。

 筆者は、首脳陣が離脱したふたりの穴埋めにいろいろと工夫を強いられるが、結果的にそれが新たな可能性を育み、チームの総合力を上げることにつながるのでは、と期待する。災い転じて福とできるのではないか。

 具体的には、打順だ。大谷はベッツに代わって1番を任された。フレディ・フリーマンは3番のままで、間の2番にウィル・スミス、テオスカー・ヘルナンデスなど、右打者を入れた。これは合理的だし、正しい試みだ。

 開幕からドジャースは、大谷2番、フリーマン3番と左打者を並べていた。相手チームはドジャースを封じるには、このふたりを抑えることに注力し、より多くの左投手をぶつけてきていた。計算すると、大谷はキャリアで対左投手の打席が31.6%だったのに対し、今季最初の2カ月は35%と増え、フリーマンもキャリアで30.6%だったのに、37%と著しく多くなっていた。

 大谷は左投手を苦にしないと言われている。今季も対左投手には、打率.291、出塁率.349、長打率.487、OPS(出塁率+超打率). 836、6本塁打でオールスター級の数字だ。ちなみに対右投手になるとそれぞれ.323、.416、.700、1.116、21本塁打でMVP級である。

 フリーマンだとその違いはさらに顕著になる。今季対左投手は打率.243、出塁率.336、長打率.383、OPS.719、3本塁打で主力打者としては物足りない。一方、右投手だとMVP級でそれぞれ.332、.438、.578、1.016、10本塁打である。

 2020年、アトランタ・ブレーブスに所属していたフリーマンは打率.341、出塁率.462、長打率.640、OPS1.102の成績でナ・リーグMVPに選ばれた。実はそのシーズン、ブレーブスはフリーマンの前後をロナルド・アクーニャ、ダンスビー・スワンソン、マルセル・オズナと右の強打者で固めていた。おかげでフリーマンは左投手と当たることが少なく、対左投手の打席は、わずか23.7%だった。

 ちなみに右打者のベッツは右投手であろうが左投手であろうが、それほど大きな差はない。はっきりしているのはベッツが戻れば、再びこの3人が打順の1~3番を任せられるということ。ベッツが戻るまでは左、右、左をテストし、どちらがドジャースにとってベターなのかを判断すればいい。

 大谷は打順について聞かれると、「打順というよりは前後のバッターが誰かというのが一番大事かなと思います」と答えた。「打線のメンバーが変われば流れも変わるし、アプローチも変わる。そしてそれに慣れていかないといけない。特にポストシーズンに向けて大事なんじゃないかなと思います」とも話している。

 大谷は1番で起用されるようになって以降の数字を振り返ると(カッコ内は2番での起用)、17試合(69試合)で打率.303(.314)、出塁率.420(.387)、長打率.727(.602)、OPS1.147(.989)、本塁打8(19)。サンプルとしては小さいが、1番のほうが出塁率も長打率も上になっている。

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著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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