夏の甲子園で見つけた逸材! 鳴門渦潮のエースで4番・岡田力樹のスイングに見たバットマンとしての将来性
敗れはしたが早稲田実業戦で存在感を示した鳴門渦潮の岡田力樹 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
【4番・エースを務めるチームの大黒柱】
大会5日目(8月11日)第1試合の早稲田実業(西東京)と鳴門渦潮(徳島)の一戦。世間はお盆休みに突入したせいか、観客の入りがすごい。外野席まで8割方埋まっている。
1回表、高校球界屈指のスラッガーとして注目の早稲田実業の宇野真仁朗が打席に入る。相手の外野手がフェンスいっぱいに深く守っているのを見て、「あそこにヒットを打って、足で二塁打にしてやろう」。きっとそんなことを考えていたのだろう。
筋書きどおりの痛烈な打球がレフト前に飛ぶと、宇野はなんの躊躇もなく、二塁を陥れた。あらためて「いい選手だなぁ」と感心していたら、鳴門渦潮の1回裏の攻撃、一死一塁でネクストバッターズサークルの打者の様子が目に飛び込んできた。
早稲田実業の先発左腕・中村心大の投球に合わせて、盛んにタイミングをとっている。一応やっています......といった"見せかけ"ではない。一球一球、しっかりとトップをつくりながら、繰り返し右足でタイミングをとって、投球の間合いを計っている。
「いい準備をしているなぁ」
見せかけの準備をしている選手はよくいるが、これだけ入念な準備をしている高校生はなかなか見ない。
鳴門渦潮の4番・岡田力樹(りゅうき/3年/176センチ・76キロ/右投左打)。エースとしても徳島大会をほぼひとりで投げ抜き、4番も務めるチームの大黒柱のその"心がけ"に目を奪われた。
一死一、二塁で迎えた最初の打席、岡田は3球目のスライダーにピタッとタイミングを合わせてきた。左投手の変化球に対し、右半身で踏み込んでいって、ジャストミートで捉えた打球は、ライナーで右中間を襲う先制のタイムリーとなった。
【185球を投げ抜いたタフネス】
次の打席はどうするんだ? 楽しみにしていた第2打席、やはりネクストバッターズサークルで3球、入念にタイミングをとっていたから、初球から渾身のフルスイングだ。
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著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。