盛岡四はマシン3台で佐々木朗希対策。効果ありもキレが異次元だった (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 まず力を発揮したのは、先発マウンドに上がった菊地だった。2試合連続コールドで勝ち上がってきた大船渡打線にも、菊地は「朗希は全国的に騒がれているけど、打線は岩手の公立校と考えればウチと同じ」と強気だった。

 菊地のストレートは最速138キロ。遅くはないが、佐々木の剛球に見慣れて、全国の強豪と練習試合をこなしている大船渡には「打ちごろ」かもしれない。そこで自信のあるフォークなど変化球を駆使することに決めた。とくに効力を発揮したのが「6割のストレート」。この球種は夏の大会直前に偶然生まれた「隠し球」だった。

「春に準優勝したことで、いろんな取材があって『撮影するからピッチングを見せてほしい』と言われることが多かったんです。全部本気で投げたら肩が持たないので、6割くらいの力で投げたら今まで以上にボールが動くことがわかったんです。横山とも『これは使えるな』と話して、深く握ってみたり工夫しました」

 6割のストレートは、シンカーのように左打者の外角へと逃げていくクセ球だった。捕手の横山が「打ち取られたバッターが不思議そうな顔をする」という新球を要所で使い、時にはインコースにストレートを投げ込むことで大船渡打線に的を絞らせなかった。

 菊地にとって、佐々木と投げ合うのは初めてではなかった。小学6年時、県大会で対戦した際には菊地が投げ勝っている。とはいえ、1対1の同点で最後は抽選によって幸運にも勝利したため、本人に「投げ勝った」という意識はない。菊地は「当時から朗希は体が大きくて、とにかく球が速かったです」と振り返る。6年ぶりの投げ合いに、気持ちが乗っていた。

 問題は攻撃である。18.44メートルの距離を挟んでマウンドに立つ佐々木は、やはり大きかった。

 6番で起用された横山は、左打席から佐々木の生きたボールを体感していた。

「トップガンで目を慣らしたから、スピードはそこまで速く感じない。でも、キレがものすごいな......」

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