高校野球で人生に誇りを。下関国際・坂原監督が伝えたいこと (2ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

「不祥事明けということもあって、スタンドのお客さんからのヤジも聞こえたり。選手たちは完全に委縮していましたが、私もまだ若かったこともあって『おまえら、気にするんじゃねえ!』と言いながら試合前のノックを打ったりしましたね」

 公式戦初采配となったこの試合は毎回失点を喫しての5回コールド負け。その後も中々勝てない時期が続いたが、2008年に転機が訪れる。

 当時、夏の大会前最後の公式戦にあたる会長旗争奪大会(現在は廃止)で初戦突破。自身の就任後、初めてとなる公式戦での勝利を挙げた。

 さらに同年夏はコールドでの夏初勝利も達成。翌2009年夏はベスト8、2011年夏は現在部長としてともに指導にあたる、エース・大槻陽平を軸にベスト4に食い込んだ。

 2015年春には初めて県の頂点に駆け上がり、夏も準優勝を果たす。そして2017年夏、就任12年目で悲願の甲子園初出場を掴み取った。

 安定して県大会の上位に顔をすようになった下関国際だが、"順風満帆"な野球人生を歩んできた選手は多くはない。

「ウチに来る選手は、基本的に大きな実績を残せていない選手です。たとえば、現チームでエースの鶴田(克樹)も中学時代は軟式で無名の捕手でした。地元の強豪から声がかからなかった県外出身の選手もいます。みんな自信がないところからのスタートなんです」

 野球、勉強両方での成功体験が乏しく、自信を持てないまま、下関国際の門を叩く。目一杯野球に打ち込むことで、そうした選手たちにひとつでも誇れるものを持ってほしいという思いもある。

 坂原のなかに、指導者として揺るがないひとつの信念がある。「ひとつの物事に集中して取り組む」ことができなければ、大きな目標は達成できないということだ。

「何かひとつの分野を極めようと思ったとき、"片手間"でやっても成功することはできないと思っています。脇目を振らずにひとつのことに打ち込むことは、決して否定されるものではないとも思うんです」

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