ドラフトもう1人の逸材、安田尚憲は「松井秀喜さんを目指したい」 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 状況やカウントによってスイングの種類も増え、とらえる確率が格段に上がった。

 いよいよ、ドラフトを迎える。プロという世界にどんなイメージを描いているのだろうか。

「まだプロのボールを見ていないですし、どれだけ通用するかもわかりません。それに指導法もあるでしょうし。すべてはチームに入ってからですね」

 高卒の野手、特にスラッガータイプは一軍の戦力になるまで時間がかかると言われている。-岡田や中田翔(日本ハム)もそうだった。

 T-岡田は1年目からファームでスタメン出場を続けたが、3年間はまったく打てず、打率は2割前後。期待された本塁打も5本、4本、5本と振るわなかった。キレのあるストレートに変化球、インコースの厳しい球にも対応できず、3年間は自分のスイングをさせてもらえなかった。

「3年も苦しんだんですか......」

 自主トレでも顔を合わせてきた母校の先輩スラッガーの当時の状況に、あらためてプロの厳しさを感じたようだ。ただ、この夏の安田のバッティングを見ると、進化のスピードは-岡田よりも速い。4年目の夏から一軍に定着し、5年目にブレイクした-岡田よりも早く、一軍の戦力として試合に出ているような気がしてならない。

 清宮はプロ志望会見の席で「(王貞治氏の)868本を目指せるような選手になりたいと言った。そこで「松井秀喜は507本塁打だけど」と向けると、苦笑いを浮かべてこう返してきた。

「僕はそういうのを言うのが得意な性格ではないので......。1本1本と積み重ねながら、球界を背負うホームランバッターになっていきたい。目標はバッティング以外の部分も含めて、松井さんです」

 停滞知らずの成長力を武器に、どんなバッターになるのだろうか。安田尚憲のプロ野球人生がまもなく始まる。

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