初回6失点のベンチで...。
大阪桐蔭を蘇らせた西谷監督の「言葉学」 (2ページ目)
この試合、勝ち上がった際の過密日程に備え、西谷監督は2年生左腕の横川凱を先発させた。「少しでも楽に投げさせてやろう」と主将の福井章吾には「じゃんけんに勝ったら、今日は先攻」と伝えており、まさに理想の展開となった。
「あれで油断はしなかったですが、計算はしました。これで横川が5回ぐらいまで投げてくれて、あとをつないでいけば」
横川には「5点まではOK」と送り出したが、ワンアウトを取っただけでまさかの5失点KO。ベンチに戻ってきた横川に西谷監督は「誰がいっぺんに取られてええなんて言うたんや!」とひと言。ただその口調は、怒鳴ったり、突き放したりするのではなく、関西風に意訳するなら「なにしとんねん。しっかりせんかい!」といった調子。そして選手たちにはこう言った。
「オレらの日頃の行ないが悪いんかなぁ。しゃあない、0対0からもう1回や!」
どんな状況下でも悲壮感は漂わせない。いい意味での明るさと緩さで、選手たちの力を引き出させる。このあたりは目立たないが、西谷監督の選手操縦法における大きな特長だ。
6点のリードを追いつかれ、2回には勝ち越された。なにより相手エースは初回とは見違えるようなボールを投げ始めた。2回から5回までヒットはわずか1本と、完全に流れは静岡に傾いていた。
ただ、西谷監督には確信があった。気迫を前面に出して投げる相手エースの姿に、「これだと9回まで持たない」と。そこで選手たちに得意のたとえ話を交えながら、こう言ったという。
「絶対に落ちてくる。だから今はボディやぞ、ボディ。アッパーはいらんから、ひたすらボディや」
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