北海を襲った「幸運」→「悲運」の暗転。作新学院54年ぶりV (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 攻撃側にとって、もっとも悪いのはゴロを打っての併殺だ。打者としては、当然、高めの球に絞って外野フライを狙う打撃をするのがセオリーになる。打ち損じて内野フライでもアウトは1つですむからだ。同じアウトになるにしても、低めの球を打ってゴロだけは避けたい。併殺打を打つぐらいなら、まだ三振の方がましという状況。当然、篠崎も外野フライは頭にあった。

「外野まで飛ばそうと思いました。(遠くに飛ばそうと強く)振ったことでバッティングが崩れたので、途中からはダブルプレーになってもいいから低い打球を打とうと思いました」

 2球で2ストライクを取り、篠崎をこういう心境に追い込んだ時点で大西の勝ち。6球目のファーストゴロになった打球も「ファウルにしようと思った」(篠崎)と何とか当てた打球だった。北海バッテリーが攻撃側のやりたいことをすべて封じた勝負。だからこそ、ダメージは1点以上のものがあった。

 じつは、この回の初めにも北海には不運があった。

 先頭打者の4番・入江大生がカウント0-2からのスライダーをハーフスイング。入江本人も「振っちゃったと思ったんですけど......」と言うほどだったが、判定はボール。ここから大西は四球を与えてしまう。

「三振を取ってくれてもいいかなと思ったんですけど。あそこで先頭をフォアボールで出したのが痛かった」(捕手・佐藤大雅)

 続く藤野佑介にセンターのフェンスを直撃する二塁打を浴び、鈴木萌斗にも四球を与えて無死満塁。リードはしていたものの、「アップアップになってしまった」(佐藤大)。不運な判定から始まったピンチを脱するきっかけとなりうるのがあのファーストゴロだったが、さらなる不運に襲われ、北海バッテリーは余裕も、なす術もなくなってしまった。

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