【新車のツボ60】マツダ・アテンザセダンXD 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ちなみに6速+アイドリング約800rpmで、車速は50km/h強。つまり、うまく運転すれば、高速以外は全域1000rpm以下で事足りてしまうのだ。もっと極端にいうと、空いた街中なら、発進時の一瞬だけ1速で、あとはすべて6速に入れちゃっても変速不要で普通に走る。ほとんどエンストしそうなところからジワジワと力を出すディーゼルの健気(けなげ)さは、やっぱりMTでないとわからない。

 最新クリーンディーゼルは粘り強いだけでなく、本気で踏むとビックリするくらいパワフルでもある。だからアテンザXDもそこいらのスポーツカーを蹴散らせるほど速い。まあ高回転の伸びこそ優秀なガソリンエンジンにはかなわないが、フルスロットルならガソリン4.0リッター相当の馬鹿力(420Nm)を出すから、加速時の瞬発力は本当にのけぞるほどスゴイ。

 まあ、エコカーとしてはディーゼルやハイブリッドそれぞれに得手不得手があって、渋滞でストップ&ゴーを繰り返すような場面ではハイブリッドのほうが圧倒的に有利だが、高速道路を一定回転でブッ飛ばすケースでは純エンジン車のディーゼルが逆転する。高速メインの使い方なら実燃費20km/Lもむずかしくはなく、ディーゼル燃料の軽油はレギュラーガソリンより約2割も安いから、クルマをクルマらしく使う人ほど、総合経済性はディーゼル優位になる。

 それに、アテンザXDはスポーツカー風スタイルや19インチという武闘派的なタイヤサイズから想像するよりは、乗り心地もずっと快適。ボディサイズが大きいので直進性もヒタッと重厚で安定。すべての反応がじんわり正確なので、うまく運転すれば気持ちよく走るし、下手な運転は意外にクルマがカバーしてくれないのも、クルマ好きにはツボ。

 電気をからめたハイテクで複雑に制御されるハイブリッドは基本的に、機械まかせで走るのがもっとも効率がいい。しかし、ディーゼルエンジンに手動変速機のMTを組み合わせたアテンザXDは、前記のシフト操作や操縦性もそうだが、自分なりに工夫して走る余地が残されている。うまく運転できれば、そのぶんだけ燃費や走りの気持ちよさにもきちんと影響が出る。どうせ自分で運転するクルマなら、アテンザXDくらいの"人間が介入できるツボ"が残っていたほうがクルマへの愛着も深まるってもんである。

【スペック】
マツダ・アテンザセダン
全長×全幅×全高:4860×1840×1450mm
ホイールベース:2830mm
車両重量:1490kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ・2188cc
最高出力:175ps/4500rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
変速機:6MT
JC08モード燃費:22.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:302.6万円

プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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