【新車のツボ45】
ルノー・トゥインゴ・ゴルディーニRS 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 昭和から平成初期にかけて、手ごろなスポーティカーの定番といえば"ホットハッチ"だった。ホットハッチの元祖は1975年発売のフォルクスワーゲン・ゴルフGTI。当時のゴルフといえば世界的な大衆コンパクトカーだが、そこにちょい大きめの排気量で、かつ専用チューンを施した1.6リッターエンジンを積んだゴルフGTIは、アウトバーン(=ドイツの速度無制限道路)でポルシェを追い回せる性能をうたって、世界の若者を狂喜させた。

 その後を追うように、日本でもホンダ・シビックやマツダ・ファミリア、日産パルサーなどの本格ホットモデルが登場。1980年代から90年代前半の日本は、それらホットハッチの全盛期だった。当時は「免許を取ったら、ひとまずハッチバック」が世の常識で、クルマ好きの若者がこぞってホットハッチに乗ったのだ。だから、私も含むオヤジたちは"ホットハッチ"と聞くだけで、青春時代の甘ずっぱい思い出のツボが刺激されてしまう。

 2012年現在、ホットハッチはほとんど絶滅危惧種といっていい。ゴルフGTIは今も存在するが、ベースのゴルフはすでに全幅1.7mを超える完全3ナンバー。その大きく重くなったボディと時代に合わせて、最新のゴルフGTIは2.0リッターターボで200馬力を軽々とオーバーする超高性能車になってしまった。

 それは確かに「ホットなハッチバック」であるが、すでにとんでもなく速く、本気で走らせると免許がなくなる可能性大。よくも悪くも甘ずっぱい青春感は、もうそこにはない。かつてのホットハッチのように"アマチュアが公道で思いっきりアクセルを踏んで、スカッとできるカタルシス"を味わうには、もはやゴルフより2クラス下くらいのサイズと性能じゃないと危うい時代になった。

 というわけで、今の日本で買える本物のホットハッチは実質的に2台しかない。1台が当コーナー第39回で紹介したスズキ・スイフトスポーツであり、もう1台がこのルノー・トゥインゴ・ゴルディーニRSである。

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