「僕の助けになっている」。フィギュアスケートを描くときに双眼鏡を使う理由
ニコン双眼鏡で見るプロの視点(第3回) ライター 小宮良之氏(小宮良之プロフィール)
1972年、横浜生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大学に留学。2001年からバルセロナに渡り、スポーツノンフィクションライターに。トリノ五輪、ドイツW杯などで取材を行ない、06年から日本に拠点を移す。著書は『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など20冊以上、小説家としても『ラストシュート』(角川文庫)でデビュー。スポルティーバのフィギュアスケート特集号にも寄稿
スポーツの中でもとりわけ秋から冬のこのシーズンは、フィギュアスケートに注目が集まる。最近では女子のロシア勢が4回転を飛ぶなど、アスリート的な側面がクローズアップされている。しかしもともとは曲に合わせた振り付けで、力強さを表現したり、しなやかさで観客の心を掴んだりと、アーティスティックな側面も大きな魅力で、楽しみどころの多いスポーツと言える。
そんなフィギュアの魅力を言葉として表現しているのが、小宮良之氏だ。選手のしぐさ一つ一つに注目し、それがのちにどんなドラマにつながっていくのかを、とことんまで考え抜いて紡ぎだすその言葉は、読者にフィギュアスケートの新たな一面とその選手の深淵を伝えてくれる。
そんな原稿を世に送り出す小宮氏にとって、必要不可欠なアイテムが双眼鏡だ。試合会場には必ず持参するという双眼鏡で、何を見て、その景色をどう原稿に落とし込んでいるのか、話を聞いてみた。
――フィギュアスケートのシーズン真っ只中ですが、今はどの選手に注目をしていますか。
「高橋大輔選手ですね。復帰した昨シーズンに書かせていただいた原稿が大きな反響を得ました。実際、4年ぶりの復活はすごい挑戦で、しかも復帰してから全日本選手権2位になった姿は、奇跡に近かった。彼がシングルの集大成として、今年12月の全日本選手権を迎えるので、今はそこをどう描こうかなというのが楽しみですね」
――高橋大輔選手はどんなところが優れているのでしょうか。
「世界一と言われているステップもそうですが、単純に氷の上で滑っている姿が、ほかの選手と僕は違うように見えます。曲を解釈して、曲そのものを滑りで表現している。音と一体化する感じがすごく見ていてわくわくしますね」
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