元プロ野球スカウトが告白。双眼鏡で逸材選手の「違い」がわかる

  • 高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu、PIXTA

ニコン双眼鏡で見るプロの視点(第2回) 阪神タイガース 元スカウト 菊地敏幸氏 
(菊地敏幸プロフィール)
きくち・としゆき 1950年生まれ、神奈川県出身。法政二高から芝浦工大に進学し、捕手、外野手、一塁手として活躍。社会人野球のリッカーを経て、89年より阪神のスカウトを担当。東日本統括スカウトとして飛び回り、藪恵壹(やぶ・けいいち)、井川慶、赤星憲広、鳥谷敬ら30人以上の選手の獲得に携わった。2014年に退団した。

 10月17日(木)にプロ野球のドラフト会議が行なわれる。このドラフトは各球団にとって、チームの勝敗同様、球団の未来を大きく左右する重要な意味を持っている。だからこそ、全国各地の球場に足しげく通い、200人を超える選手をリストアップし、その動向、成績を逐一追うなどして、ドラフトに備えている。この重要な任務を担うのが、スカウトだ。いったい彼らは数多くの選手のなかから、どうやってプロとして活躍できる原石を見つけ出すのか――。

 阪神のスカウトとして25年間、その原石たちをプロの舞台へと導いてきた菊地敏幸氏に、選手を見るポイント、そして双眼鏡だからこそわかる逸材の見分け方について話を聞いた。

――10月17日にドラフト会議があります。元スカウトの菊地さんから見て、どの選手に注目していますか?

 今年は高校生では、佐々木朗希(大船渡)と、奥川恭伸(星稜)、大学生では森下暢仁(明治大)が目玉です。12球団のほとんどがこの3人を指名すると思いますね。とくに注目しているのが、佐々木朗希。大谷翔平以来の逸材なのは間違いないです。身体能力が高くて、腕の振りが速くて強いですよね。これは真似できることではありません。ただ、腕の振りが強いと、それだけ体に負担がかかります。だから余計に、故障が心配になってくるんだと思います。それもあって、地方大会の決勝で休ませた結果、甲子園に出られなかった。

 今後は、腕の振りの速さ強さに合わせた筋力や骨格などを作っていかないといけないと思います。できればしっかりした育成システムを持つ球団に入って、育てていってほしいですね。

――スカウトとして選手を見るときに大切にしていること、また印象に残った選手はいますか?

 私は選手の第一印象をすごく大切にしています。まだお目当ての選手を見たことがない状況でも、グラウンドに行けば、一目でこの選手だとわかることがあるんです。それだけ良い選手は輝いて見えるし、存在感があります。

 これまでで一番印象に残っているのは藪恵壹ですね。当時、東京経済大学でピッチャーをやっていましたが、首都大学リーグの2部でした。スカウトとしては、2部リーグはほとんどノーマークなんですが、ある監督さんから「一度見に来てください」と言われて、球場に行きました。スタンドに上がってグラウンドを見たら、一人で外野を走っている選手がいたんです。これが絵になるんですよ。すぐに彼が藪だとわかりました。投げる姿も打つ姿も様になっていましたね。すぐに大学の監督さんに声をかけて、結果的にその2年後にドラ1で阪神への入団が決まりました。

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