「起業」を官民あげて促すのはなぜか。高校の野球部生徒が社会の流れやその現状を学ぶ

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

奥野一成のマネー&スポーツ講座(21)~高校生のための起業プログラム

 集英高校の野球部顧問を務めながら、家庭科の授業で生徒たちに投資について教えている奥野一成先生から、経済に関するさまざまな話を聞いてきた3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と新入部員の野球小僧・鈴木一郎。前回は、高校生が株に投資をするN高投資部のチャレンジを皮切に、現場感あふれる株式投資の話を聞き、大いに刺激を受けたふたりだった。

 暗くなって野球部の練習が終わった夕方、部室では由紀と鈴木は高揚した気持ちを隠しきれなかった。これまでの高校生活とはちょっと違う、新しい景色を見たような気がしたからだ。

鈴木「いろいろなことをやっている高校生がいるんですね」
由紀「会社を作っちゃう高校生もいるって聞いたわよ。高校生がそんなことやっていいのかしら?」

「もちろんやっていいんだよ」と言って、奥野先生が会話に加わってきた。

奥野「現実にいきなり会社を設立するのはハードルが高いかもしれないけど、いまはいろいろなところが高校生や大学生に向けた起業プログラムを開催している。たとえば東京都が行なっている『起業スタートダッシュ』とかね」

 東京都が、起業家のすそ野を広げるために高校生を対象にした起業家養成プログラム『起業スタートダッシュ』のHPにはこう記載されている。

「一般的な起業家のイメージは、普通の人とは一線を画す才能があるように思われがちですが、学生の頃の経験や日々の生活の中の些細なきっかけで起業したり、趣味の延長線上で起業したり、起業の理由は様々です。

『起業スタートダッシュ』は、様々な起業家の生の声を聴いて『起業』について知っていただくとともに、起業に必要なマインドや、自分のアイデアを形にするためのスキルを身に付けていただくことを目指します」

 企業もこの分野に注目している。リクルートが行なっている「高校生Ring」もそのひとつ。高校生のための参加型のアントレプレナーシップ・プログラムで、「身近な気づきから始まる参加型プログラム」としている。学校単位でどんなテーマで起業をするのかを提案して優勝を競うイベントなども行なわれていて、高校生から「高齢者同士のマッチングサービス」「高齢者と学生をつなぐ国内留学サービス」といったアイデアが出されている。

鈴木「なんか僕の進むべき道が見えた気がする。奥野先生、何から始めたらいいですか」

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