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箱根駅伝 渡辺康幸が語る青学大「初優勝から11回中8回総合優勝」の強さと史上最高レベルの2区 (3ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【青学大・野村は"空を飛んでいた"】

 その意味では1区でスタート直後から飛び出した吉居駿恭選手(中央大3年)は、3年前のお兄さん・大和選手(中大OB、現・トヨタ自動車)を思い出させてくれる走りで、吉居兄弟は本当に非凡なセンス、天才肌だなと思いながら、解説をしていました。しかもスタジオのゲスト解説に大和選手がいるという、巡り合わせも面白い展開だったと思います。

 青学大が5区まで先頭に出られなかったのは吉居選手の飛び出しがあったからで、それがなければ前半区間から青学大が独走に入る展開になっていたので、その意味では中大が往路を盛り上げてくれたと言えます。

 個人的に印象に残っているのは、まずはシード権争いです。8位から13位前後までが終盤まで粘り強い戦いを見せていました。いつもは早い段階でシード校の情勢が見えてきますが、途中で順位を落としてシード圏外に落ちた帝京大、東国大、日本体育大などが最後まであきらめずに前向きに走っていた。普通なら前が見えなくなるとあきらめてしまう傾向が強くなりますが、「あきらめの悪いチーム」が帝京大だけではなかった(笑)。

 この展開は戦っている監督からしたらたまったものではないのですが、見ている視聴者の方からすれば、面白いレースだったと思います。

 選手で言えば、6区で56分台の走りを見せた野村昭夢選手(青学大4年)はすごかったですね。まるで地面に足を着いていないような、ピーターパンのように空を飛んでいるのではないかという走りでした(笑)。(1kmのペースが)2分30秒を切っていたので、56分台とはこういう走りになるのか、と。中継車に乗って解説していても、ぶつかるのではないかという怖さを感じるくらいの走りでした。

 あとは大会前から注目していた関東学連の8区・秋吉拓真選手(東京大3年)から9区・古川大晃選手(東京大大学院4年)の東大リレー、それに9区の給水をした八田秀雄教授先生。復路の個人的ハイライトはここでした。秋吉選手は、指導してみたいと思わせる魅力のあるランナーです。

つづく

⚫︎プロフィール
渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、2010年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説では、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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