駒澤大、全日本と箱根駅伝へ向けて高まる機運 出雲3連覇を逃すも「ただでは転ばない」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 デビュー戦を終え、島子はすでに次を見ているが、箱根駅伝に関しては不安要素があるという。

「自分はアップダウンが苦手で、体力もまだないので箱根になると少し怖さを感じています。まだハーフを走ったことがないので、上尾シティハーフマラソンを走る予定です。これから長い距離に対応できるようにして全日本、箱根で結果を出していきたい」

 1年生の桑田駿介の活躍の陰に隠れがちな2年生だったが、輝きを放つ選手が出てきたことは、チームへの刺激という意味で大きかった。

 また、今回の出雲で復活を印象付け、チームに勢いをもたらしたのは、3区の山川拓馬(3年)だ。山川はここまで、苦しいシーズンを過ごしてきた。
 
 1月に故障し、走り始めたのは4月。なかなか状態が上がらずにいたが、復帰明けのレースになった6月の東海大学長距離競技会の10000mで29分10秒72の自己ベスト、7月の網走学連記録会10000mで28分36秒98をマークして自己ベストをさらに更新した。だが、夏の一次合宿は筋膜炎のような状態になり、二次合宿に入ってジョグを始め、ポイント練習を開始したのは8月末。そこから状態を上げてきた山川の走りは、この日の駒澤大のターニングポイントになった。
 
 トップの創価大と27秒差でスタートすると前との差を縮めていき、4.5キロ付近で黒田朝日(青学大・3年)や辻原輝(國學院大・2年)、山口翔輝(創価大・1年)とトップ集団を形成。5.5キロ過ぎに黒田との一騎打ちになり、顔を歪めながらトップで襷を渡すことへの執念を見せたが、ラストで黒田に先行された。
 
「自分の区間では1位で絶対に次に渡すぞという気持ちでいたんですけど、最後、黒田に前に行かれてしまって。区間賞も昨年につづいてヴィクター(キムタイ・城西大3年)に獲られてしまった。自分が1位でくれば流れが変わったと思いますし、うしろをラクにさせることができたんですけど、2位というのは何かしら自分の甘さがあったのかなと思っています」

 だが、駒澤大は山川の走りでレースを再度、組み立てることができた。それでも、勝てなかったからなのか、表情は終始、硬かった。

「悔しいですね。この2位で得られたことは、篠原さんや(佐藤)圭汰とか誰かに頼るのではなくて、自分が頼られるような走りをしないといけない。今後、自分が走る区間はすべて1番で帰ってくる、絶対に負けないぞという強い気持ちでチームを引っ張っていこうと思っています」

 すぐに全日本大学駅伝がやってくる。山川は1年時から出走しており、前回は2年連続の区間賞で優勝に貢献した。今回も区間賞を獲れば3年連続、チームは5連覇がかかる大一番になる。

「全日本はやり返さないといけない。そういう気持ちを全員が持たないとダメですね。個人としては今回の出雲を振り返り、同じようなレースを繰り返さないようにしないといけない。全日本ではこの悔しさを晴らし、先輩方に喜んでもらえるような駅伝をしたい」

 ロードに強い山川の復活、4区の伊藤の走りは、故障で出雲は不在だった佐藤圭汰(3年)に何かを感じさせるものがあったはずだ。

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