パリオリンピックで北口榛花が日本女子やり投・フィールド種目の歴史を切り拓く コーチが予見していた上昇気流 (2ページ目)

  • 寺田辰郎●取材・文 text by Terada Tatsuo

【チェコで筋力とスピードがアップ】

 チェコで現在行なっているトレーニングの大まかな流れを、セケラックコーチが話してくれた。

「週に9回か10回、トレーニングを行なっています。2回投てき練習をして、その後に筋力トレーニング、リズムや走りのトレーニングなどを行なっています。投てき練習は30分くらい。その後のトレーニングは長くて1時間15分くらいです。その時間を超えてしまうと集中力が下がるので、長時間のトレーニングは意味がありません」

 北口が練習で行なうことができる数値(強度)は、東京五輪の頃からどう変化しているのだろうか。

「簡単に比較できませんが、ウエイトトレーニングは5~7%レベルアップしています。走りやジャンプは7~8...10%くらいかもしれません」

 筋力とスピードをアップさせ、それを投げにつなげていく。日本でも同じ考え方で強化をしている選手は多いが、やり投強豪国のチェコのコーチがメニューを立て、直接指導してくれる。その練習をチェコ人の選手たちが目の前で行なっていれば、北口も迷いなくそのトレーニングに邁進できる。

 そのスピードとパワーを、もともとの特徴である上半身の柔軟性を生かした投げにつなげることで、北口は世界トップレベルに躍進を遂げることができた。

「ハルカは一生懸命にやりますから、僕もそれに応じた指導をしないといけないと思いました。彼女はプロフェッショナルでした。僕もプロフェッショナルとして、やるべきことをやらないといけなかった」

 北口とセケラックコーチの強化方針は、大きな部分では一致していた。

 だが昨年あたりから、北口は最後の調整段階で自身の感覚を優先したい、と考え始めた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る