【世界陸上】リオデジャネイロ五輪へ、期待を抱かせてくれた若手たち (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 山縣がいなくなり、桐生と藤光謙司、高瀬慧、飯塚翔太のオーダーで組んだ大会最終日の4×100mリレーで桐生は、「100mの時はガチガチになって落ち着かない部分があったけど、リレーは先輩方にバトンを託すだけだと思って落ち着いていけた」と、100mの時より安定した走りをみせた。「予選、準決勝とも遅れなかったし、落ち着いて自分のペースで走れた」と言うように、カーブがきつい2レーンだった予選でも外国勢と遜色のない走りをしてチームの6位入賞に貢献した。

「世界陸上の一番の収穫は経験を積めたことだけど、楽しく走れたとも思います。もちろん個人では準決勝に進めなかったという悔しさがあるけど、0秒01で負けることは日本であまりなかったし、後半で抜かれるのも日本では体験していなかったことだから。世界の舞台で走れたことは、本当に良かったし楽しかったと思います」

 こう話す桐生は今季、初めてのことだらけだった。織田記念も初出場なら日本選手権も初。ましてやダイヤモンドリーグや世界陸上など、昨年は考えてもいない舞台だった。「ダイヤモンドリーグは10秒50台だったけど、今回の世界陸上では10秒31まで上げられた。だからもっと海外の選手と走って経験を積んでいけば、強さを身につけられると思うし。とりあえずは準決勝に出ないと話にならないから、しっかりと予選、準決勝とラウンドを積み上げるイメージをしていきたい。次の世界陸上は19歳になっているので、経験をするだけでなく、世界と勝負できるようになっていなければいけないと思います」

 世界のトップ選手の走りを見て、刺激も受けた。特に昨年の世界ジュニア100m王者のアダム・ジェミリ(19歳・イギリス)はリレーの決勝でも同じ1走を務めただけに気になった。

「ジェミリ選手は今回200mで19秒台を出して決勝進出を果たしていました。それを見習いたいと言うか、このままで満足してはいけないと思わされました。今回100mで負けた選手に次は絶対に負けたくないけど、(特に)ジェミリ選手と100mを走ったら、絶対に負けたくないという気持ちがあります」

 海外のメディアからも注目され、声をかけられて話を聞かれた桐生。彼はこの世界陸上で競り負ける悔しさや、リレーで決勝の舞台を経験し、次に向けて大きなモチベーションを持つことができた。

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