オリンピアンからタクシーアプリのドライバーへ 「いまが一番楽しい」と言える理由 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

メインはトライアスロンのコーチとして活動を続けているメインはトライアスロンのコーチとして活動を続けているこの記事に関連する写真を見る たまにお客様とお話をしていて、この事業に興味を持ってもらったら、『ドライバー仲間には俳優もスポーツ選手もいます』『私はトライアスロンをやっていて、オリンピックに3回行っています』なんて話をすると、『えーっ』と驚かれます。『楽しいな。オリンピアンの運転に乗せてもらって、今日はよかった』とか、言ってもらえます」

 現在、庭田さんの活動はメインのトライアスロンコーチが7割、『GOクルー』の仕事は3割という。業務時間は基本的に朝6時から昼12時までで、水木金の週3日ほど、ドライバーとして都内を走っているそうだ。受け付けた注文を1日10件程度こなす。車内での支払いのやり取りもないので、副業として始めたい人にとってはハードルが低く、取り組みやすい仕事だという。もちろんスケジュール調整は自分次第で、イベントが入ったり、コーチ業が忙しくなったりすれば、乗務日を削って対応することもできる。

「私は乗っている日数が少ないので、たぶん、10年くらい乗らないと上手にならないだろうなと思っています。道をすべて覚えて、お客様に乗ってもらって喜んでもらえるドライバーになりたいです。2種免許を持つドライバーとしてプロ意識を持っていないといけないし、おもてなしの心を持っていないとできない仕事です。だから、胸を張ってこの仕事をしていると発言していこうと思ってやっています。今後はマイクロバスや大型の免許を取りたいし、フォークリフトの免許も取りたいですね」

 若い頃は「夢がなかった」と話していた庭田さんは、充実した毎日を送るなかで、「フリーで活動しているいまが一番楽しいです!」と言う。その日焼けした笑顔が輝いていた。

■Profile
庭田清美(にわたきよみ)
1970年12月10日生まれ、茨城県牛久市出身。23歳の時に入社したフィットネスクラブで、会員に誘われてトライアスロンに出会う。94年に競技者として大会デビュー。97年にプロ宣言したあと、ワールドカップ蒲郡大会で日本人初の表彰台となる準優勝を飾った。トライアスロンが初めて競技種目となった2000年シドニー大会から五輪3大会連続出場を果たした。日本選手権では03年に初優勝し、05年、06年に連覇を果たす。16年に現役引退。第一線を退いたあとは、トライアスロンコーチをメインにしながら多彩なジャンルの仕事に従事。昨年6月からタクシーを呼べるアプリ『GO』のパートタイムのドライバーになった。

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