オリンピアンからタクシーアプリのドライバーへ 「いまが一番楽しい」と言える理由 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【家では地図を見ながら道を覚える】

 庭田さんが所属している東京・門前仲町営業所の業務は、アプリからの注文(配車依頼)のみで、この業態の第1号の営業所だという。みんなが驚くことをしたり、新しく何かを始めたりすることが面白いという庭田さんにとっては、新たなチャレンジとして必然の選択だったのかもしれない。

「お客様をお乗せするので、心地よい運転を目指しています。ブレーキでスーッと止まるとか、走り出しをスムーズにするとか、早めの判断で安全に運転するとか......。自分はもともと同乗者に気を遣う運転をしていたので、それをさらに進化させた運転をするようにしています。

 最初のうちはしばらく緊張していましたね。道がわかるのか、配車依頼をしたお客様のところにたどり着けるのか、道順がイレギュラーな場合にどう対処するのか、駅のどこに迎えに行けばいいのか、怖くて怖くて......。それでも、人に聞きながら、家で地図を見ながら、道を覚えるようにしてやっています。地図を見るのは大好きですし、流れを止めないで上品に運転するのも好きですし、都内の道をだんだん覚えてきたのも楽しいです。覚えたことは全部、スマホにメモしているんですけど、きっと私、ちょっとオタクなんですよ(笑)」

「自分が経験して得た情報をしっかり記録して、ドライバー仲間に提供したい」と話す庭田さんは、もうすっかり一人前のプロドライバーのようで、頼もしい。

「私はスポーツだけで食べていくのが嫌なんです。スポーツ界にいたら、『オリンピアンの庭田さん』と言われるじゃないですか。でも、別にえらいわけでもなんでもないし、人間的には本当にしっかりしていないダメ人間で、ちょっと自慢できるとすれば、面白いところくらいですから(笑)。

 スポーツとは関係なくて、しかもオフィスワークは苦手だから、平日の空いている時間にメインのコーチ業とはまったく違う別の仕事をやらせてもらっているので、気分転換になる。何よりもサービス業はすごい勉強になりますよね。

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