番記者が振り返る羽生結弦の五輪連覇。あらためて感じた王者の強さ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 実際、そのとおりの戦いを実践し、その構成で自信を持って演技できた理由を、羽生は「ルッツやループの4回転にずっと挑戦し続けてきたから」と話した。それがあったからこそ「選択肢が増えたし、自信につながった」と。

「最初に4回転ルッツの扉を開いたのはボーヤン・ジン選手(中国)だった。僕も彼を追いかけて限界を超えようと思った。他の選手も強くなってきて、その中からネイサン・チェン選手や宇野昌磨選手も出てきた。僕は、本当に時代に恵まれたスケーターだと思います」

 こう話した羽生は、平昌五輪とソチ五輪の優勝の違いについてこう述べている。

「4年間積み上げてきたものがあるのかなと感じます。ソチの時のがむしゃらさとはまた違って、今回は本当に獲らなきゃいけないという使命感もあったし、『これを逃したら』という気持ちも少なからずあった。19歳だったソチの時はまだ時間があると思っていたけど、今回の五輪は『もう時間がない』『あと何回滑れるかわからない』という緊張感もあった。その意味でも、ソチの時よりも、五輪というものを感じられたのかなとも思います」

 羽生にとって平昌は、勝たなければいけないという強い想いを持って臨んだ大会だった。それを終えた彼の口からは「やっとホッとして次へ進めるというのはあります」という言葉も出た。右足首に痛みが残る状態でも、持てるすべてのものを出し尽くし、それをやり遂げる姿を見たからこそ、今も彼の次なる挑戦への期待は膨らむのだ。

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