井上康生が語った「リオ五輪、男子柔道全階級メダル獲得」の真実

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

男子柔道・井上康生監督インタビュー(前編)

 2016年8月のリオ五輪で大躍進を遂げたのは、男子柔道だ。全7階級でメダルを獲得(金2個、銀1、銅4個)し、監督の井上康生は全競技終了後、大粒の涙を流しながら、代表選手たちを「誇りに思います」と語った。

 井上が監督に就任した4年前は、ロンドン五輪で金メダルが「0」に終わって当時の篠原信一監督が辞任し、また女子柔道選手に対するパワハラ問題が明るみに出るなど、柔道界が混乱した時期だった。わずか4年で男子柔道を立て直した井上は柔道界の改革者だろう。

 しかし、競技人口の減少が叫ばれる柔道母国の改革はこれからも続き、自身も現役時代に戦った重量級(100キロ級、100キロ超級)の再建は「道半ば」と話した。2020年の東京五輪まで指揮を執ることが決まった井上は、すでに新たな一歩を踏み出している。

リオ五輪の男子柔道で全階級メダル獲得に導いた井上康生監督リオ五輪の男子柔道で全階級メダル獲得に導いた井上康生監督── 11月の講道館杯や12月のグランドスラム東京では、リオ五輪の代表だった選手が出場していないとはいえ、66キロ級の阿部一二三選手(日本体育大学1年)と100キロ級の飯田健太郎選手(国士舘高校3年)という若い世代の活躍が目立ちました。

「間違いなく、そのふたりは東京五輪の代表争いで中心になってくる選手です。阿部がグランドスラム東京で優勝し、飯田は講道館杯でウルフ・アロン(東海大学3年)に敗れたとはいえ2位、グランドスラム東京でも優勝した選手に敗れはしましたが3位に輝いた。期待値に対して、結果も伴ってきています。やはり、4年後に東京五輪を控えていることが、若い世代の意識を高めていますよね。五輪はただでさえ一生に一度、あるかないかの挑戦なのに、自国開催で、かつ柔道の発祥の地である日本で行なわれるわけですから」

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る