パリオリンピック男子バレーボールを髙橋藍の勝負論で総括 なぜ「1点」届かなかったのか
8月10日、パリ南アリーナ。パリオリンピック男子バレーボール決勝で、地元フランスはポーランドを終始、圧倒していた。大歓声の後押しがあるだけではなく、東京五輪でも金メダルを獲っているだけに"強者の厚み"を感じさせた。
フランスは第1セット、第2セットを連取。第3セットも、24-21とリードした。それは奇しくも、日本のイタリア戦と同じ展開だった。
5日前の準々決勝、日本はイタリアを相手に2セットを取った後、3セット目も24-21とリードしていた。マッチポイントで、一度でもサイドアウトを取ればよかった。勝利は掌のなかにあったが、逆転でこのセットを落とし、結局、2-3で敗れたのだ。
一方、決勝のフランスは3セット目を危なげなく25-23で勝ち取り、3-0で2大会連続の金メダルを勝ち取っている。
なぜ、日本は「1点」が届かなかったのか?
1点の重みを紐解く、ひとつのヒントがある。
イタリア戦の試合後、コート上で記念撮影が行なわれた photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る 今年5月、パリ五輪前のインタビューで、髙橋藍と「金メダル」についての問答をしたことがあった。
――簡単ではないのは承知ですが、52年ぶりの金メダルの気運が盛り上がっています。その条件とは?
髙橋はそうしたテーマに日頃から向き合っているのだろう。ほとんど即答した。
「チームでミーティングした時、『金メダル』って言う選手もいます。でも、僕のなかでは金メダルのイメージは正直、持てていなくて。現時点(今年5月)では、自分のオリンピックの位置づけは『メダル獲得』。なぜなら、今の日本代表が(世界大会で)決勝に行ったことはないから。去年のネーションズリーグで3位決定戦を経験(結果は銅メダル)できたので、そこ(メダル)のイメージはあるんですが」
その答えは道理だった。髙橋は饒舌にこう続けていた。
「決勝には行っていないし、アメリカ、ポーランドには勝っていない。そこを倒せるイメージは持てていません。自分は、勝つには段階を踏みたいほうですね。だからこそ、ネーションズリーグの目標を『決勝進出』にしています。その決勝を経験できた段階で、『オリンピックで金メダル』の目標も作れるんじゃないかなって」
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。