石川祐希が振り返る激闘のパリ五輪予選「早く出場を決めたこともプラスには考えていない」

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by karaya masaki

石川祐希のAttack The World vol.9

 バレーボール男子日本代表は9月30日から10月8日にかけて行なわれたパリ五輪予選(OQT)で、2008年の北京五輪以来、16年ぶりに自力で五輪切符をつかみ取った。主将としてチームの中心に立ち続けた石川祐希は、代表が始動した春先から「必ず五輪切符を取る」と宣言してきた。その言葉を有言実行した激闘の10日間。石川に見えていたもの、そして、その先に見えているものとは――。

パリ五輪予選を振り返った石川祐希 photo by Tatematsu Naozumiパリ五輪予選を振り返った石川祐希 photo by Tatematsu Naozumiこの記事に関連する写真を見る

【OQTでの出場権獲得に「ほっとした」】

――石川選手は、春先からずっと「ここ(OQT)で必ず五輪切符を取る」と言葉にし続けてきました。その理由は?

「理由は特にないんです(笑)。本当に取ると思っていたので。『取りたい』じゃなくて『取る』と決めていたので、ずっと言い続けていた。それが理由です」

――スロベニアに勝って五輪出場が決まった時は、石川選手も涙を浮かべていました。プレッシャーも相当なものだったのではないでしょうか。

「プレッシャーは、ゼロだったかと言われるとそうではないですけど、僕個人としてはそれほど感じていなかったです。でも、僕が『必ず取ります』と言うことで、チームにはプレッシャーをかけていましたね。

 涙があふれたのはプレッシャーというよりも、ずっとOQTに懸けてきましたし、本当に難しい予選を通過できて『ほっとした』という感じです。実際に結果を見ると、イタリアが五輪出場権を取れなかったですし、一番難しい大会というのもわかっていましたから」

――今挙がったイタリアもそうですし、強豪国にとっても厳しいOQTを勝ち抜けたことは、日本代表にとってどういう経験になりそうですか?

「自信にはなりますが、それ以上でもそれ以下でもないと思います。ここで出場権が取れたからといって、五輪でも結果が出るわけではありません。(早く出場を決めたことで)五輪のための準備期間が長いというのも、正直なところあまりプラスには考えていません。逆に今回は出場権を取れなくて、来年のネーションズリーグをずっとフルメンバーで戦ってランキング上位をキープして、出場権を獲得して五輪本番に臨んだほうがチームとして固まっているかもしれない。そこは結果でしか判断できないです。

 今回で出場権が取れたことのメリットを挙げるならば、体を休める期間を作れるということと、少し気持ちが楽というところでしょうか。今は、僕は自分のシーズンに集中して戦えているし、他の選手もシーズンを思う存分戦えるのがいいところだと思っています」

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著者プロフィール

  • 柄谷雅紀

    柄谷雅紀 (からや・まさき)

    スポーツ記者、ライター。1985年生まれ、大阪府出身。筑波大男子バレーボール部で全日本大学選手権など多くの大会で優勝した。卒業後の2008年から大手新聞社で事件や事故、裁判の取材を経験。転職した2013年からスポーツの取材に携わる。2018年平昌五輪、2021年東京五輪、2022年北京五輪を始め、多くの競技を現地で取材している。@masaki_karaya

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