検索

「レゲエ校歌」で話題の和歌山南陵、廃校寸前から再建への道 バスケ部はウインターカップに出場

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

和歌山南陵高校が挑む再建への道(前編)

 11月29日、その報せは唐突にもたらされた。

 和歌山南陵高校、生徒募集停止の措置命令解除──。

 和歌山南陵は今夏、「レゲエ校歌」で話題になった高校だ。「イェイイェイイェ〜イ」のイントロで始まる、レゲエ調の校歌を夏の高校野球・和歌山大会で歌い上げた。その珍妙なニュースはスポーツ媒体のみならず、テレビのワイドショーでも大々的に取り上げられた。

今年4月に和歌山南陵高の理事長に就任した甲斐三樹彦氏 photo by Kikuchi Takahiro今年4月に和歌山南陵高の理事長に就任した甲斐三樹彦氏 photo by Kikuchi Takahiroこの記事に関連する写真を見る

【2億7000万円の滞納金】

 レゲエ校歌をきっかけに多くの人間が和歌山南陵の「惨状」を知り、言葉を失ったに違いない。

 全校生徒18名。その内訳は野球部10名、バスケットボール部6名、吹奏楽部2名。運動部の16名が暮らす寮は老朽化が進み、トイレは雨漏りのため寮生は傘を差して用を足すありさま。経営難のために各方面の支払いが滞り、寮の食事が菓子パン1個という時期もあった。

 ほかにも給与未払に端を発した教職員のストライキ、元生徒による理事長(当時)へのパワハラ提訴など、和歌山南陵を取り巻くネガティブなニュースは枚挙にいとまがなかった。学校法人の南陵学園は相次ぐ行政指導の末に、2022年には生徒募集停止という重い措置命令を受けた。生徒はどんどん転校していき、最後まで残ったのが現3年生の18人だったのだ。

 旧経営陣が総退陣し、4月に新たな理事長に就任したのが甲斐三樹彦(かい・みきひこ)だった。甲斐は大分県で経営コンサルタントをしており、かつては南陵学園の営業部長を務めた経緯もある。

 火中の栗を拾う覚悟で理事長になった甲斐だったが、その再建へのハードルは想像以上に険しいものだった。

「直近の経理状態を調べようとしたら、決算書が2期分もない。行政から届いた指導書はすべてスルーしている。教員の不当解雇など裁判を50件以上も抱えている......。聞いていた話と全然違うやん、と頭を抱えました」

 そもそも生徒募集停止という重い処分を受けた学校自体、前代未聞だった。甲斐は自身の人脈を頼りに学校の滞納金を完済すべく奔走する。その総額は約2億7000万円までふくらんでいた。

1 / 4

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

フォトギャラリーを見る

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る