2026年のホンダのF1復帰を、過去ホンダを世界一に導いた技術者・浅木泰昭が展望する (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 樋口 涼●撮影 photo by Ryo Higuchi

【ホンダとレッドブルの水面下のやりとり】

ーーRBPTについてはどう見ていますか?

 自動車メーカーではないレーシングチームがPUを開発・製造するのは非常に難しいと思います。なぜなら部品や原材料のサプライチェーン(供給網)を含めて構築しなければならないからです。

 たとえば、エンジンの主要部品やバッテリーにしても、お金を出したら買えるという単純なものではありません。自動車メーカーの場合は、部品や材料のメーカーと量産部門での長い付き合いがあり、そこで利益を上げているので、なんとかF1でも手伝ってくれるというところがあります。でも、時にはホンダでも「ちょっと勘弁してください」と言われることがあります。それが現実です。

 量産部門でのつながりがまったくないレーシングチームがいきなりトップレベルの部品や材料を確保することができるのか、という問題に今からRBPTは直面すると思います。そういうハードルを乗り越えて、競争力の高いPUをつくれるのか。そこは注目していますし、逆に実現できれば快挙です。

ーーRBPTはフォードと提携し、バッテリーや電動化の技術開発に携わるということになっています。

 フォードが最高峰のバッテリーやモーターを供給できればすごいことだと思います。でもレッドブルはRBPTを設立したあと、ホンダと2026年シーズン以降も提携して戦えないかと声をかけてきました。

 その時、レッドブル側は、内燃機関のエンジンは自分たちでつくるので、ホンダにはバッテリーの開発を担当してほしいと言ってきたんです。それでは技術者の育成や環境技術の開発もできないので、ホンダはレッドブルの申し出を断りました。ホンダの代わりにその役割をフォードが果たせるのかどうかは疑問に感じています。そもそもフォードは20年以上もF1から離れていましたので、現代のF1に通用する技術はないと思います。

 フォードの過去のF1活動を振り返ってみても、彼らの参戦スタイルはスポンサー的な意味合いが強いのかなと感じています。フォードは1960年代後半から2000年代前半までF1活動をしていましたが、イギリスのエンジンビルダーのコスワースに資金援助して開発を任せ、完成したエンジンの名称に「フォード」という名前をつけていました。今回も同じような形になるのではないかと見ています。

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