レッドブル・ホンダの戦い方に変化。角田裕毅も学びたいレース運び (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by BOOZY

 3位を走るフェルスタッペンとしては、先にピットインし、フレッシュタイヤの一撃を利用して前に出るしか方法はなかった。そして35周目にそれを仕掛け、アウトラップで可能なかぎりプッシュしてハードタイヤに熱を入れ、翌周に目の前でピットアウトしてきたボッタスを追い詰めて抜き去った。ここしかないチャンスを、しっかりと掴み獲ったのだ。

 逆に言えば、ピットストップで抜けるのは1台だけ。この時点で5秒前に行かれてしまったハミルトンを逆転する術はなかった。それが、予選の結果が決勝の流れを大きく左右する、ということの意味だ。

 ポールポジションからスタートできていれば、フェルスタッペンは首位を守って走り切っていたかもしれない。メルセデスAMGの1台に抜かれたとしても、ピットストップで抜き返せたかもしれないからだ。

 すべてはタラレバでしかないが、極めて小さな差がタラレバのあちら側とこちら側を分ける。それがレッドブル・ホンダ対メルセデスAMGのトップ争いが繰り広げられる、2021年シーズンのF1なのだ。

 ハミルトンはフェルスタッペンに抜かれても動じず、コース上で抜き返し、さらには僚友ボッタスを抜いてチーム内でのピットストップ戦略の優先権を手にした。

 ピットストップが始まる30周目までにこれができていなければ、勝っていたのはボッタスだった可能性が高い。ハミルトンはそのことを熟知していたからこそ、冷静に、かつ攻めるべき場面ではアグレッシブに攻めてターゲットを仕留めた。あらためて王者ハミルトンの強さが表われたレースだった。

 一方、レッドブルは低グリップかつ風の強いアルガルベで、タイヤをうまく作動させることができなかった。そのせいでこの週末はマシンバランスに苦労し、RB16B本来のパフォーマンスを引き出し切れなかった。

 結果、メルセデスAMGよりもダウンフォースをつける方向に行かざるを得ず、ストレートスピードを伸ばせなかったため、コース上での追い抜きにも苦労しなければならなかった。レース週末全体として、レッドブルはわずかに後れを取ってしまった。

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