ヤマハ移籍でいきなり「横綱相撲」。ビニャーレスが開幕戦を制す (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 移籍初年度であることを考えれば、この安定感の高さは驚嘆すべきことだ。

 一般に、選手が異なるバイクメーカーのマシンに乗り換えた場合、その特性を把握して意のままに操れるようになるまでには、世界トップクラスのライダーといえども、ある程度の時間を要するものだ。メーカーを移った初戦で勝利を挙げた希少な例では、バレンティーノ・ロッシ(ホンダ→ヤマハ:2004年)、ケーシー・ストーナー(ホンダ→ドゥカティ:2007年/ドゥカティ→ホンダ:2011年)などがあるが、これらのケースと比較しても、ビニャーレスの資質の高さは容易に推し量ることができる。

 さらにいえば、今回のレースウィークは不安定な天候に翻弄されて、土曜の走行スケジュールがすべてキャンセルになり、決勝日もスタート直前に雨が降り始めたためにレース進行が遅れる、といった想定外の攪乱要因がいくつも発生した。

 砂漠の国カタールの首都ドーハからクルマで30分ほど走ったところにあるロサイル・サーキットは、砂漠の真ん中に位置している。走行初日の路面はけっして理想的な状態ではない。

 また、今年はレースウィーク前週や最中に何度も豪雨に見舞われたために、せっかく改善されたコンディションがまた振り出しに戻るようなことが幾度も続いた。これらの要素は、別のメーカーに乗り換え、チームを移ったばかりの選手にとって、かなり厳しい条件であることは間違いない。

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